ユーザ中心設計のすすめ(第20回)― 全階停まる!?エレベーターの操作ボタン |
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2008/12/14 日曜日 18:56:59 JST |
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本編
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これからとあるビルの3階で打ち合わせ。エレベーターに乗り込み行き先階のボタンを押そうとしたところ、全階のボタンの階数表示が点灯しているではありませんか!!「急いでいる時に限って・・・」と思いながらも仕方なく乗ることに。
エレベーターに乗り込んだ時のボタンの状態
・・・おかしいです、エレベーターが動きません。なんとなく行き先階のボタンを押してみると
なんとなく行き先階のボタンを押した時のボタンの状態
ボタンの縁が点灯し、エレベーターは動き出しました!このエレベーターでは、ボタンの階数表示が常時点灯していたのです。
私が毎日通勤するビルのエレベーターのボタンの階数表示は、未選択時は非点灯(写真3)で、押すと点灯するタイプ(写真4)であるために「全階が選択されている」と勘違いをしてしまったのです。
ボタン未選択時 ボタンを押した時
前者のエレベーターでは「ボタンの階数表示が見やすい」というメリットがありますが、後者に慣れている私のようなユーザが初めて乗った際に、ボタンの階数表示が点灯しているのを見て「既に押されている」という勘違いをしないかなぁと思うのですが。皆さんはこの様な経験がありませんか?うっかり者の私だけが勘違いしてしまったのでしょうか・・・。
※本編部分は使いやすさ研究所<http://usability.novas.co.jp/>の使いやすさ日記(No.423 担当:橋本)より、一部加筆修正して転載しています。
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解説
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「無難なデファクトスタンダードタイプか、見やすさ優先の新タイプか?」
日本で一般的によく見るエレベータの操作ボタンは、後者の全消灯のタイプでは無いでしょうか?少なくとも普及率はこちらの方が多いでしょうし、場合によってはデファクトスタンダード(*)と言えるほど標準的な仕様かもしれません。一方前者の全点灯のタイプは、あまり見掛けることは無いですが、パッと見た時に数字が読みやすい、と言うメリットがありそうです。
まず全点灯を採用した時のデメリットとしては、今回の事例のように「ボタンがすでに全部押されて、各階に停まるようになっている?」という勘違いをユーザに起こさせてしまうということでしょう。しかし通常はそれでもボタンを押してみる、ドアが閉まっても動かない、といった行為や状況から、すぐにユーザは気付くことになり大きな問題にはならずにすみそうです。では全消灯型はと言うと、すでに多くの人が馴染んでいて違和感もなく使っているというメリットがあります。、数字が光らなくても、十分な大きさ、および背景色と文字色の十分なコントラスト差が確保されて読めるようになっていれば、基本的にデメリットは無いと思われます。
こうした特徴を考えると全点灯型のタイプは、外来者の多いオフィスや公共空間では、一瞬の混乱は避けられない点で、見やすさのメリットよりもデメリットが強調されてしまうでしょう。非常時などであれば、より大きな混乱を引き起こす可能性も否定できません。しかし例えば最近のマンションなどのように、基本的に部外者を禁じ特定の利用者が大半を占めるようなところであれば、メリットが生きてくると思われます。また検証をする必要がありますが、視覚障害者の方や高齢者の方は健常者以上に見やすさへのメリットが感じられる可能性があるので、こうした施設(特に特定の方が繰り返し利用するタイプのもの)などへの導入も良いのではないでしょうか。もしかしたら一度全点灯のタイプに慣れてしまうと、全消灯に対して今まで感じなかった不満を持つことになるかもしれませんね。
商品を開発する上で、デファクトスタンダードを意識することは非常に大事ですが、大きな混乱を起こさずにより良いものが提供されるのであれば、ユーザにとっても十分に魅力的なものとなります。まずはメリットが最大に生かされるような導入を進めていくと、いつかは後発のものがデファクトスタンダードになるかもしれません。
(*)デファクトスタンダード:事実上の標準。特に規格化されているわけではないが、すでに市場に普及・認知されている仕様などのこと。
[ごあいさつ]
今年の5月より連載を始めさせていただいた「ユーザ中心設計のすすめ」もお陰様で20回目となりました。大変ありがとうございました。
年の瀬を迎えるに連れ、例年以上に寒暖の差の激しさを感じる中、世界経済の乱降下から長期的な不景気感が日々強まっています。
本コラムをご愛読いただいている皆様のご健康と、益々のご活躍による経済の復興をお祈りして、今年のご挨拶とさせていただければと存じます。皆様、良いお年をお迎えください。
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筆者プロフィール
龍淵 信
1963年生、1986年法政大学工学部建築学科卒業後、工業デザインを勉強。
1992年株式会社ノーバスに入社。2001年4月にグループ会社の株式会社ユー・アイズ・ノーバスの設立に参画。
2005年10月グループ会社である株式会社U'eyes
Design(ユー・アイズ・デザイン)の執行役員を経て、2007年10月よりノーバスの経営戦略室とU'eyes
Designのシニアアドバイザーを兼務。現在に至る。
携帯電話などのコンシューマ製品、公共機器、OA機器のユーザインタフェース開発およびユーザ評価・調査に数多くかかわり、特に自動車用システムは、ここ10年ほどで150ほどのプロジェクト実績を持つ。
株式会社
U'eyes Design:http://ueyesdesign.co.jp
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