2008/12/02 火曜日 16:14:46 JST |
眠っている知財を新たな収益源に
3施策で"横浜価値組企業"の倍増をめざす
■横浜価値組企業は65社を超える
企業が所有する特許や意匠権などを「知的財産」と呼び、その活用は今後の企業間競争を生き残る際の重要なファクターのひとつとされている。これら知的財産の活用を支援するため横浜市は2年前から「横浜価値組企業」の認定制度を導入し、認定先には広報や低利融資の実施などさまざまな経営支援を行ってきた。
現在の横浜価値組企業数は65社。来年はさらに増えることが予想されているが、市ではこの認定制度の本格的な普及を狙い、このほど新たなテコ入策を打ち出した。
■知財で収益をあげる
経済観光局経営・創業支援課によれば、特許などの知財を所有している企業は市内にたくさんあるが、その現状は自社の技術を保全するための特許取得がほとんどで、ライセンス供与などのように知財そのものから収益を上げているケースは少ない。
そこで、市は知財の重要性を訴え、その活用に少しでも多くの経営者の目を向けさせたいとする。
「そもそも横浜価値組企業の認定制度は、経営者に知財への理解を深めてもらうことを目的のひとつとしている。さらに、認定の際にはその経営への活用度をランク付けするので、利用価値をより高めるために、どのようにすればいいのかも考えることができる」(市川悦雄課長)。
■認定企業数を倍増
経営者の知財に対しての関心は必ずしも高いとはいえない。たとえば、特許ひとつを取っても、その取得と維持にコストがかかることから申請に消極的な企業も多いのが実状だ。横浜価値組企業はこのような経営者の意識の変革を狙っているが、まだ認定制度そのものの知名度が低い。このため、これをテコ入れすることで市内企業にアピールし、認定企業数を倍増させたいという。
「これまでは、どちらかというと市のインキュベーション施設を利用している企業など、認定先も市となんらかのつながりのある会社が多かった。しかし、これでは企業数に限りがあり本格的な普及に至らない。より積極的に知財活用を訴えることでより横浜価値組企業を増やしたい」(同)とする。
■横浜価値組普及のための3つの施策
認定制度を普及させるために市は3つの施策をあげる。それは①知財を保有する企業の掘り起こし②パターン別事例紹介③知財による資金調達支援だ。
このうち知財企業の掘り起こしは、複数の特許などを活用している市内企業の200社強にダイレクトメールやeメール、また実際に訪問して横浜価値組企業制度の紹介と利用を呼びかける。
またパターン別事例紹介は、業種業態によりさまざまな知財の活用の課題があるので、その課題と解決法を事例別にパターン化し、市内企業に紹介する。これにより経営者は自社がどのパターンに近いのかを発見し、その成功事例を参考にしてもらうのである。
そして、知財による資金調達支援は、知財で収益をあげている企業が金融機関から融資を受けやすくなる手法の検討をしている。
これらの施策は、市も経営に参画している知財マネジメント支援機構(IPMAX)を活用して実行に移される。
■セミナーは月2回に
ところで、これらの施策とともに注力しているのが「知財セミナー」の開催だ。市ではこれまで月に1回だったセミナーを月2回と倍増させている。これは"知財立国ニッポン"を目指す特許庁と協働で行っているが、関東経済産業局によると、関東地区で開かれる中小企業向けの知財セミナーの3分の1にあたる21回が横浜市で行われているという。これを見る限りでも市の取り組みが際立っていることがわかる。
経営・創業支援課では将来的に200社以上を価値組企業として認定したいとしており、近い将来、横浜が日本を代表する知財企業の集積地になることも考えられそうだ。
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