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ユーザ中心設計のすすめ(第15回)―張り紙がいっぱい!~新幹線用券売機~ プリント
2008/10/05 日曜日 07:19:36 JST

第15回は、張り紙がいっぱい!新幹線用券売機に関する事例を紹介します。
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本編
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最近、新幹線用の券売機をよく見かけます。窓口が混んでいるので券売機を利用することが多いのですが、いつも最初の画面で一瞬考えてしまいます。
  rs-081005-1.gif

「指定席の切符を買いたいんだけど、どのボタンを押せばいいんだ?」

結局、画面のボタンからは判断しにくいので、画面周囲にある張り紙を見てボタンを押しています。指定席の切符を買うには「新幹線特急券(指定)+乗車券」ボタンを押すのですが、ボタンを見ただけでは分かりませんでした。

ボタンを見ただけで切符の種類が分からないのが問題ですね。ボタンの文言がユーザに馴染みのある言葉になっていないことが要因の一つとして挙げられます。漢字がズラッと並んでいるので読みにくいことも、それを助長しているようです。

一方、画面周囲の張り紙は馴染みのある言葉で簡潔に表現されていて分かりやすくなっています。張り紙の言葉をボタンに使用してくれると、良くなりそうですね。

おそらく最初は張り紙が無かったはずです。ただそれではユーザが切符を購入できない状況が多発しため、補助情報として張られたのでしょう。駅員さんの苦労がしのばれますね。こうした張り紙が無くても使えるようになっていなければならないと思います。

※本編部分は使いやすさ研究所<http://usability.novas.co.jp/>の使いやすさ日記(No.273 担当:青島)より一部加筆修正して転載。
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解説
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「張り紙は、システムに張られた絆創膏と思え!」

本編では紙面の都合上、分かりやすい言葉の問題だけを取り上げていますが、ここではもう一点、優先順位が付いていないたくさん(8つ)の入り口を並べすぎている、という点を取り上げてみたいと思います。「新幹線の切符を買いたい」と思っているユーザの視点で、改めてこの画面に並んでいるボタンを見てみると、一見どれも該当しそうな入口がたくさん並んでいて迷ってしまいます。
例えば、初めの入り口は、
・カード会員きっぷ受け取り
・新幹線切符購入(現金・カード)
・新幹線切符購入(回数券利用)
・入場券購入
と言った感じで、大きく4つ位に絞ったらどうでしょうか?
上から縦1列に並べられることで優先順位も付けることができます。
さらに
・新幹線切符購入(現金・カード)
を押すと
・指定席+乗車券
・自由席+乗車券
・指定席券のみ
・自由席券のみ
・乗車券のみ
などと出れば、例え手数が増えても迷わなくなる分、購入に要する時間は減らせそうです。
良く操作手順が少ないことが良いことだ、と言われる方がいます。これはこれで間違ってはいないのですが、今回のように不特定多数のユーザが使うシステムにおいては、操作手順が増えても確実に迷わず操作できることが効果的な場合があります。
※あくまでも例えであり、他のアイディアも含めてどれが効果的かと言うことは検証が必要です。

日常的にシステムに接している利用者や運用者自らが、不便だなとか使いにくいなと感じた時に、こうした張り紙を張って対策をしている光景をよく見かけます。私たちはこうしたシステム周辺に張られた張り紙を、「システムの絆創膏」と言っています。開発者に対して私たちが「まず現場を見てください」とよく言う理由の一つとして、こうした現場からの悲鳴と対策が目の当たりにできるからにほかなりません。また現場で対策できるのは、対処療法でしかなく、そのままの改善では十分でない場合もあります。現場で起こっていることの本質の要因を把握し、出来るだけ根本的な改善を行なうことで、開発者、運用者、利用者のすべての方々がより満足できる結果を得ることになります。

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筆者プロフィール
龍淵 信

tatsuibuchi.jpg1963年生、1986年法政大学工学部建築学科卒業後、工業デザインを勉強。
1992年株式会社ノーバスに入社。2001年4月にグループ会社の株式会社ユー・アイズ・ノーバスの設立に参画。
2005年10月グループ会社である株式会社U'eyes Design(ユー・アイズ・デザイン)の執行役員を経て、2007年10月よりノーバスの経営戦略室とU'eyes Designのシニアアドバイザーを兼務。現在に至る。
携帯電話などのコンシューマ製品、公共機器、OA機器のユーザインタフェース開発およびユーザ評価・調査に数多くかかわり、特に自動車用システムは、ここ10年ほどで150ほどのプロジェクト実績を持つ。

株式会社 U'eyes Design:
http://ueyesdesign.co.jp
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