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ユーザ中心設計のすすめ(第12回)―使った金額が分からない!モバイルSuicaの利用履歴 プリント
2008/08/22 金曜日 15:06:59 JST
第12回は、モバイルSuicaのGUIに関する事例をご紹介します。

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本編
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それはいつものように月末、まとめて営業交通費を精算していた時のことでした。
私は携帯電話を「おさいふケータイ」対応機種にしてから「モバイルSuica」を愛用しているのですが、もしかして「モバイルSuica」の利用履歴を見れば簡単に運賃が調べられて、 この作業をすばやく終わらせられるのではないか?と思いつきケータイ取り出し、早速アクセス!!

・・・したのですが、期待はあっさり裏切られてしまいました。“使った金額の履歴”ではなく、“残高の履歴”が表示されたのです。利用履歴という見出しから、クレジットカードの利用明細のような画面を期待してしまったのは、私だけなのでしょうか。 
       rs-080822-1.jpg
武蔵溝ノ口-武蔵小杉の運賃は573-423=150・・・ちょっと面倒
ちなみに「Edy」も愛用しているのですが、「Edy」は利用履歴で使った金額を確認することができます。 
      rs-080822-2.jpg
マイナス表示は支払額、使った額が一目でわかる
「Edy」も「モバイルSuica」もトップページで現在の残高を表示しています。残高は現在の残高さえわかれば十分なので、利用履歴では残高より使った額が一目でわかるほうが望ましいのではないでしょうか。
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解説
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「UCDで競争に勝つ」

「履歴を見る」ということは、ユーザにとって何がしたい状況なのでしょうか?
この筆者が書いているように「いつ」(「何に」)「いくら」使ったかが分かること、が最も重要ことの一つであることは、おそらく異論が無いことではないでしょうか?会社の清算だけでなく、家計簿などを付けている人にとっても同様です。現状の仕様では、「利用履歴」というより、「残額履歴」と言い換えた方が良いように感じます。残額の履歴が残っていることのメリットは、私自身もすぐには思い浮かばず、なぜこのような仕様になったのだろうかと逆に興味深いところです。ひとつ思い浮かぶのは、パスネットやイオカードと言った一世代前のカードの裏に印字されていた情報が、この残額表示だったことです。
       rs-080822-3.jpg
                              イオカードの裏面の印字(残額履歴)

カードの場合はここでしか情報の確認が出来なかったので、都度残額を表示することは一番重要な情報であり、書き換えができない以上これが履歴として残って行くのはユーザにとっても当たり前のことでした。このときにも個人的には、「使った金額」も印字してくれるとありがたいのに、と思いつつ、スペースが足りないんだろうなと諦めていました。(とは言え、私にとっては入札の際にひかれる「前引」より、「利用金額」を記載して欲しいくらいでしたが・・・。)こうして考えると、カード時代の制約が無くなりせっかく新しいソリューションを生み出せるシステムになったにも関わらず、ユーザの本質的な要求に気付かずに、昔の仕様のまま作り込まれてしまったのかな?と、勝手な推測をしています。実際にEdyではうまく解決できているわけですから、技術的には出来ない理由はないはずです。

本来であれば、開発の上流(システムの要求仕様を作る段階)で「利用金額の履歴が見られるようにすること」を盛り込むべきですし、万一そこから漏れても、設計段階で操作仕様を考えるデザイナーやエンジニアが、そこを救う必要があります。しかしながら、日本の開発現場の多くでは、こうしたユーザ視点で仕様を考える組織やプロセスがまだまだ浸透しておらず、結構当たり前のことでも見過ごされてしまうことが大変多いのが現状です。

この理由だけでも、両方の電子マネーを使える店舗であれば、Edyを使おうと思うユーザが少なからずいるはずです。乱立する電子マネーの淘汰が少なからず起きていくであろう中で、ユーザの利用率を少しでも高めていくことは大変重要なことです。市場に出す前にこうしたことを出来る限りつぶしておくことも、UCDを導入する効果の一つとなります。

※本編部分は使いやすさ研究所<http://usability.novas.co.jp/>の使いやすさ日記(No.391)より一部加筆修正して転載。

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過去記事
ユーザ中心設計のすすめ(序論)ーこれからの開発力を身につける
ユーザ中心設計のすすめ(第1回)-携帯電話のwebコンテンツ事例
ユーザ中心設計のすすめ(第2回)-バスの総合案内システムに関する事例
ユーザ中心設計のすすめ(第3回)-ハイブリッドレコーダーのGUI事例
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筆者プロフィール
龍淵 信

tatsuibuchi.jpg1963年生、1986年法政大学工学部建築学科卒業後、工業デザインを勉強。
1992年株式会社ノーバスに入社。2001年4月にグループ会社の株式会社ユー・アイズ・ノーバスの設立に参画。
2005年10月グループ会社である株式会社U'eyes Design(ユー・アイズ・デザイン)の執行役員を経て、2007年10月よりノーバスの経営戦略室とU'eyes Designのシニアアドバイザーを兼務。現在に至る。
携帯電話などのコンシューマ製品、公共機器、OA機器のユーザインタフェース開発およびユーザ評価・調査に数多くかかわり、特に自動車用システムは、ここ10年ほどで150ほどのプロジェクト実績を持つ。

株式会社 U'eyes Design:
http://ueyesdesign.co.jp
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