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ユーザ中心設計のすすめ(第11回)―うっかり防止!自動風呂給湯器 プリント
2008/08/10 日曜日 07:32:31 JST
第11回は、給湯器に関する事例をご紹介します。

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本編
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我が家には自動風呂給湯器が付いています。浴室だけでなく、キッチンからも操作ができ、さらにボタンひとつでお風呂が沸いてくれてとても便利です。

ところが先日、こんな失敗をしてしまいました・・・。日中に、浴槽の掃除をし、その後部屋の片付けをしたり、友達とお茶を飲んだりして休日を満喫した夜のこと、「さてお風呂に入ろう」といつものようにキッチン側のリモコンの“自動”ボタンを押し、お湯張りを開始しました。
        rs-ue11-1.jpg        
                                キッチンにあるリモコン
 
        rs-ue11-2.jpg
                     キッチンにはこんなリモコンがついています 

しばらくして『残り5分でお風呂が沸きます』、『お風呂が沸きました』とガイダンスがあったので、勢いよく服を脱ぎ浴室に入ったら・・・浴槽にはまったくお湯が溜まっていませんでした。

私は平日は帰宅後にお風呂の掃除をし、そのままお湯張りをしています。一方、休日は掃除後、最後まで水を流しきりたいのでしばらくたってから栓をするようにしています。そしてこの日、うっかり者の私は、掃除の後に栓を開けたままにしていることをすっかり忘れてお湯張りをしてしまい、大量のお湯と時間を無駄にしてしまったのでした。

こんな失敗をするのは私だけなのか…と思い、Webで調べてみたところ、案外同じような失敗をしている人がいました。そんな時、ある商品が目に止まりました。
その商品はお湯張りを開始する際に『お湯張りをします。お風呂の栓はしましたか?』とユーザに注意を促してくれます。
私の家の給湯器がこの商品だったら、うっかりミスを防げたのではないでしょうか?

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解説
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「UCDで最適仕様を考える」

キッチンのコントローラでお湯はりをしたら、栓が抜けていた・・・。
本編の筆者だけでなく、我が家でも1度こうした失敗をしたのち、お湯はりをする際には「栓をしたのか?」と確認を取るのが日課になりました。これだけでも負担に感じることになっていますし、それでも忘れることもしばしばで、その後確か1度、また同じ失敗をしています。

さてこの問題に対処するためには、いくつもの方法があります。
本編でご紹介しているものも含め、ここでは分かりやすいものとして以下の3つを上げてみましょう。
1.お湯はりの際に、システム側から「お湯はりをしましたか?」と確認を促してくれる。(本編でもあるタイプです)
2.お湯はりの際に、栓をしていない時に限り「栓がされていません」と教えてくれる。(実際にあるかどうかは未確認です)
3.お湯はりの際に、自動で栓がされるようになっている。(一部の高級機で実際に商品化されています)

ここで1は、気付きを促してくれるという点で、それが無かったものと比較するとそれだけでもありがたい機能と言えます。また音声案内ができる給湯器であれば、このアナウンスの有無でコストはほとんど上がらないであろう点もメリットです。ただし栓がしまっているかどうか自信が無い時には、結局確認に行かなければいけないので、遠隔操作というメリットがあまり生かされないとも言えます。
次に2であれば、日常のユーザの負担は栓をしていない時に栓をしに行くだけとなりますので、負担が極端に減るとともに、安心感も与えることになり、大きな満足度を提供できるものになりそうです。ただし栓をしたかどうかを検知するようなものが必要になることで、若干価格は高いものになると思われます。
さらに3になると、そもそも栓をすることそのものを意識する必要が無くなるので、ありがたみに気付かなくなるくらい便利なものになると思われます。当然それが付いていないものと比べると、相当高価な商品になることも覚悟しなければなりません。

また開発工程と合わせて考えると、1は後工程でも対応可能ですが、2,3になると開発の上流で仕様を決めておかないと実装が出来ないものとなります。ユーザ視点の取り組みは、開発の初期で行うほど効果的で、根源的な対策が可能です。出来る限り開発初期に、その機能があることでのユーザのうれしさ(逆に言うと負担度合い)と技術的難易度やコストを明文化し、ユーザにとってコストに見合ったうれしさを提供できるのか?コストをかけないことで大きな不満を与えることにならないか?と言ったことを十分に検討し、要求仕様を決めておく必要があります。

参考までに我が家の例で言うと、2回の失敗は8年間でのものです。ただし5人家族の我が家では、風呂の掃除と給湯器のスイッチを入れる人が同じではないため、いちいち掃除をした(させた?)子供に確認をしたり、大した距離では無いのですが風呂場まで行ってふたを開けて確認をすることになっています。こんな我が家をターゲットユーザとすると、皆さんであれば上記の1~3のどの仕様が良いと思いますか?

※本編部分は使いやすさ研究所<http://usability.novas.co.jp/>の使いやすさ日
記(No.447)より一部加筆修正して転載。

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ユーザ中心設計のすすめ(序論)ーこれからの開発力を身につける
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筆者プロフィール
龍淵 信

tatsuibuchi.jpg1963年生、1986年法政大学工学部建築学科卒業後、工業デザインを勉強。
1992年株式会社ノーバスに入社。2001年4月にグループ会社の株式会社ユー・アイズ・ノーバスの設立に参画。
2005年10月グループ会社である株式会社U'eyes Design(ユー・アイズ・デザイン)の執行役員を経て、2007年10月よりノーバスの経営戦略室とU'eyes Designのシニアアドバイザーを兼務。現在に至る。
携帯電話などのコンシューマ製品、公共機器、OA機器のユーザインタフェース開発およびユーザ評価・調査に数多くかかわり、特に自動車用システムは、ここ10年ほどで150ほどのプロジェクト実績を持つ。

株式会社 U'eyes Design:
http://ueyesdesign.co.jp
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