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中小企業のIT戦略(連載:第2回経営とIT) プリント
2007/07/17 火曜日 10:14:34 JST
~いい会社を作るためのIT導入のポイント~

中小企業において、いい会社を作るためにどういう風にITを活用していくか。
何回かに分けて考えていきたい。
第2回は経営とITについて考えてみよう。

 
1.経営者の役割 

 it-rennsai-2-1.jpg会社には社長がいる。社長にはいくつかの役割がある。

ひとつは事業家としての役割である。他人がやっていない、あるいは人と違うものを作ったり、サービスを提供したりすることで社会に存在価値を認められ、製品やサービスを提供し対価を得る。これが事業である。

中小企業では会社に出資する資本家としての役割もある。

ベンチャーなら起業家としての役割もある。

経営者として従業員や機械などを管理、運営し、注文を取り、製品を生産し、あるいはサービスを提供し、会社を維持、発展させる役割もある。

事業家、資本家、経営者、どれをとっても大事なのは意思決定である。

2.意思決定

経営者に求められるのは経営における意思決定である。

昨日と同じように注文が来て、昨日と同じようにモノを作り、昨日と同じように出荷する。こうした繰り返し業務で会社が回っていれば意思決定は必要ない。

it-rennsai-2-2.jpg先祖伝来の味を守る老舗のうなぎ屋がある。味を守るために意思決定が不要かといえばそうではない。仕入れるうなぎも客の好みも日々変わっていくのである。同じことをやり続けるにも意思決定は必要だ。「伝統は改革の積み重ねである」とはよく言われることである。

中小の製造業などで同じようなものを作っていたとしても外部環境や内部環境は変わっていく。

得意先からは、値下げ、納期短縮、小口納入やカンバン方式導入などを要求される。仕入先は値上げを要求してくるだろうし、同業他社は安くよい品質の競合製品をぶつけてくるだろう。エンドユーザは製品を吟味し、高品質、高機能のものを安価にと求めてくる。社内においては設備更新や労働環境の改善、継続した社員教育も必要だ。

こうしたことに対応するためには投資やさまざまな施策が必要になる。

どの程度のカネと時間をかけ、どういう成果を得るか、それらをどういう順番で実行するか、といったことを、いちいち経営者が判断し決定する必要がある。

意思決定こそ経営者の最も重要な仕事であるが、それは孤独で正解のない作業である。

3.正解のない決断

よりよい会社を作るために何かをしようと考える。その目標にたどり着く道筋を具体化したものが戦略である。戦略はひとつではない。代替案がある。

富士山に登ることを考えてみよう。登山道を登る方法がある。登山道もいろいろある。取りあえず頂上は目指さず五合目でよしとして、バスで行く方法もある。カネを惜しまなければヘリコプターで一気に頂上に着陸する方法もあるかもしれない。

it-rennsai-2-3.jpg戦略を実現するための選択肢の中から一番よいものを選び出さなければならない。確実な成果をもたらす戦略はリターンが少なく、大きな成果をもたらすためにはリスクを取ることが必要になる。

どの選択肢を取るかの正解はない。

未来計画のお客さんで中国に進出した会社がある。地方に新たに工場を作った会社もある。現在の敷地を売却し、その収益や進出補助金を原資にして工場のリニューアルを図ろうとしている会社もある。それぞれ、得意先が中国に生産拠点を移した、得意先から下請け会社の経営支援を要請された、都市再開発に伴い生産継続が困難になったといった理由はある。

いずれも大きな意思決定で、銀行や関係筋からリスクが高いから止めるようにアドバイスされた会社もある。新しい工場を作り設備を更新しても注文が増えなければ投資は無駄になる。立ち上げ当初は歩留まりも悪いだろうし、従業員や協力会社が付いて来ないといったことも考えられる。

かといって古い設備と生産技術で対応していては、飛躍は望めない。

進むか留まるか、社長は悩んだであろう。そして決断した。

決断しなければ成長や飛躍は望めないのである。

4.リスクの低減

it-rennsai-2-4.jpg戦略の選択には決断が必要だが、未来を保証するものは何もないのである。

決断に当たって、出来るだけよい選択をするためにはどうすればいいのか。

それには戦略の効果とリスクがよく分かっていることが必要である。

そこで役に立つのが情報である。

5.情報を得る

孫子の兵法に「敵を知り己を知らば、百戦危うからず」という有名な一節がある。謀攻、つまり、実際の戦闘に拠らないで勝利を収める方法について述べた中の一節である。敵情を知って見方の事情も知っていれば百回戦って危険が無い、だから勝つか負けるか分からない戦をするまでもない、といったほどの意味である。その後に、敵情を知らないで味方の事情を知っているだけだと勝ったり負けたりすると続く。

今で言えば、敵とは市場、得意先、仕入先、競合会社などの外部環境であり、己とは自社の内部環境、戦とは戦略を決定して実行に移すこということであろう。内外環境や将来動向について十分な情報を入手しておけば、戦略立案の間違いや誤った意思決定をする可能性は低く、失敗することはないということである。

経営者が戦略を決めるための情報をたくさん蓄えておくこと、情報チャネルを整備しておくことが必勝の秘訣なのである。

6.ITの活用

現在は、経営者が敵や己を知るのによい環境が出来つつある。

それはITを活用することである。

ITとは情報を相互に交換する仕組みのことである。

PCが安く、高機能になり、インターネットは広帯域化し、携帯やPDAのようにどこで使え、どこでもつなげる、いわゆるユビキタスな環境が出現した。ICタグやGPSのようにモノや場所とコミュニケーションする仕組みも生まれてきている。ビジネス向けのパッケージソフトも多数提供されている。

it-rennsai-2-5.jpgこうした技術を使うことによって、今まで10日を過ぎないと確定しなかった月次データが、締め後、数日で出てきたり、受注、仕掛かり、在庫、作業負荷、機械稼働率などの生産状況が即時に把握出来るようになったり、個別製造原価が把握できたり、離れた工事現場の建設状況が本社からネットを介して把握できたり、会社間の発注残や支払い算がホームページ経由で参照できたりといったことがITの活用によって容易に出来るようになった。

経営者の夢のひとつは自分の会社の全てを知ることである。経営者は長い間、会社のことを知りたいと思っていた。経営者なら会社内部のことが分かり、関係する外部の情報を入手できれば、次に打つ手を決めるのは容易である。

今までは人づてや帳票経由であったものが、ITの活用によって白雪姫に出てくる魔法の鏡のように問いかければいつでも求める答えを得ることが出来るようになったのである。

 次回以降は横浜市内の中小企業のIT活用状況や中小企業がどのようにIT導入に取り組んでいったかを実例を通して説明していきたい。

   (NPO法人ITC横浜副理事・未来計画代表 ITコーディネータ 齋藤順一

 
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