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ユーザ中心設計のすすめ(第9回)―メモリーオーディオプレイヤーの表示事例 プリント
2008/07/13 日曜日 11:03:44 JST
第9回は、メモリーオーディオプレイヤーで見られた表示に関する事例をご紹介します。
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本編
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タイトル:テキスト1文字分のスペースでも出来ること~SONYメモリータイプのウォークマン

最近、新しい携帯音楽プレーヤーを購入しました。そのプレーヤーを使っていての事です。
下の写真は周囲の雑音をカットできるノイズキャンセルという機能を表示しており、この場面でAのボタンを押す度にON/OFFが切り替わります。  ts-080713-1.jpg
ここで表示しているBの「Noise Canceling →ON」にある矢印が気になりました。 他のメニュー項目には付いていないので、飾りで付けたものではないようです。「なんでここだけ矢印が付いているのだろう?」と気づいた当初は疑問に感じましたが、操作しているうちにその疑問が解けました。 矢印をONの前に付けた事により「ボタンを押せば次にONになる」というガイダンスを表していたのです。

しかし、他の人にはこの矢印がどう見えるでしょうか?友人に聞いてみたところ、「矢印が付いているからONなのかなぁ」という答えが…。 この矢印を付けただけでは、現在の設定状態を示すものなのか、操作のガイダンスなのか、どちらを示しているのか明確に伝わらないようです。

普段GUIの作成を手がけている私には、たった1文字のテキストで使い勝手を向上させられるすごいアイデアのように感じられたのですが、もっと明確に分かるような提示のしかたでなければユーザーに伝わらない!そんな瞬間を目の当たりにし、考えさせられました。

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解説
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「ガイダンス(guidance)とステータス(status)表示」
オーディオプレイヤーに限らず、携帯電話やデジタルカメラなど様々な情報機器の液晶表示画面では、今回の例にあるような方法で、単語やアイコンなどを使った情報が提供されています。本編で「ガイダンス」と言う言葉が出てきますが、これは「操作するための情報」のことを指しています。また似た様な(本編で友人の方が勘違いしたとしている)情報として、現在の状態を知らせる「ステータス表示」というものもあります。今回の場合は、「Aボタンを押すと、ノイズキャンセリング機能がオンになりますよ」という情報であり、これは「操作ガイダンス」となります。例えば、同じ状況で「Noise Canceling →ON」ではなく、「Noise Canceling OFF」などとなっていれば「現在、ノイズキャンセリング機能はオフですよ」という情報となり、この場合「ステータス表示」として提供されていることになります。お察しのように、この2つは全く逆の意図となり、ユーザにとってこの2つの見分けがつかない(逆の意味と捉えてしまう)ようなものだと、大変使いにくいものになってしまいます。こうした情報提供を行う場合は、これらの情報の違いをきちんと意識して使い分けなくてはいけません。

最近の良く見られるガイダンスの例としては、携帯電話で4方向キーの周辺のキーに対して割り当てられた機能を、液晶画面の下のほうにアイコンや機能名称で提示するものがあります。必ずしも分かりやすいとは思えませんが、多くのメーカーがこうした仕様になっていることから、比較的一般に浸透している方法と言えるでしょう。以前ご紹介した、地デジのデータ放送における4色ボタンの表示もガイダンスの例となります(第6回参照)。また同様にステータス表示の例としては、同じ携帯電話でマナーモードのオン状態に提示されるアイコンなどがあります。
ts-080713-2s.jpg
                       携帯電話の5つのキーに対応する「ガイダンス」の例

                           ts-080713-4s.jpg
               携帯電話のマナーモードに関する「ステータス表示」と対応するキーの例

今回の例で言うと、ハードキーとGUI表記部分が離れすぎており、対応付けが行いにくいことが、一見して操作のためのガイダンスだと分かりにくい理由の一つとして上げられます。ただメインのオン/オフボタンが一つしかないことから、ユーザの経験の中で早期に学習を期待できそうですし、学習のための気づきを考慮して「→」を付けているのだと考えられます。ひとつ大事な補足をすると、このエリアにはいつでもガイダンスを表示するというルールで設計しておかないと、もしここにこれ以外のステータス表示やその他の情報が提示されるようであれば、初期学習後もユーザは不必要な負担を感じることになるので注意が必要です。
なお文章による表記の場合はまた別になりますので、あくまでも今回のような単語やアイコンで対象となるキーのガイダンスを表記する場合と考えてください。

※本編部分は使いやすさ研究所<http://usability.novas.co.jp/>の使いやすさ日記(No.350)より一部加筆修正して転載。

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過去記事
ユーザ中心設計のすすめ(序論)ーこれからの開発力を身につける
ユーザ中心設計のすすめ(第1回)-携帯電話のwebコンテンツ事例
ユーザ中心設計のすすめ(第2回)-バスの総合案内システムに関する事例
ユーザ中心設計のすすめ(第3回)-ハイブリッドレコーダーのGUI事例
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筆者プロフィール
龍淵 信

tatsuibuchi.jpg1963年生、1986年法政大学工学部建築学科卒業後、工業デザインを勉強。
1992年株式会社ノーバスに入社。2001年4月にグループ会社の株式会社ユー・アイズ・ノーバスの設立に参画。
2005年10月グループ会社である株式会社U'eyes Design(ユー・アイズ・デザイン)の執行役員を経て、2007年10月よりノーバスの経営戦略室とU'eyes Designのシニアアドバイザーを兼務。現在に至る。
携帯電話などのコンシューマ製品、公共機器、OA機器のユーザインタフェース開発およびユーザ評価・調査に数多くかかわり、特に自動車用システムは、ここ10年ほどで150ほどのプロジェクト実績を持つ。

株式会社 U'eyes Design:
http://ueyesdesign.co.jp
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