ユーザ中心設計のすすめ(第2回)-バスの総合案内システムに関する事例 |
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2008/04/11 金曜日 11:52:52 JST |
第2回は、公共端末であるバスの総合案内システムに関する事例をご紹介します。
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本編
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タイトル:トップ画面の在り方がおかしい~浦和美園駅バス案内システム~
写真は埼玉高速鉄道浦和美園駅にあるバス総合案内システムです。 これは、目的地へ向かうバスの乗り場、発車時刻などの利用情報が表示されるものです。画面の表示に合わせて、乗り場案内図や路線案内図のランプが点滅してくれます。
最初の画面を見た時に私はこう思いました。「目的地の索引番号って何?」「番号なんて知らないよ」「番号知らないと操作できないってこと?」最初に何をしてよいのか分からずちょっとしたパニック状態でした。
このシステムは「目的地の索引番号」の他に、「50音」「公共施設」からも目的地を探せるようになっていますが、始めに見る画面では番号を入力するようになっていてよく分かりません。
今のシステムのように最初の画面でダイレクトに入力させようとするならば、「目的地の索引番号」よりも「50音」か「公共施設」の入力がよいと思います。あるいは、ユーザによって色々な検索方法が考えられるので、最初に入り口だけを見せる方が色々なユーザが使いやすいと思います。
場合にもよりますが、公共的なシステムは画面数を減らし迅速性を優先するのではなく、ユーザへの間口を広げ確実性を重視する方が良いと思いました。
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解説
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「目的地の索引番号」がスタートの画面であることですごく便利に使えるというユーザは、この番号の意味を理解して、なおかつ自分が行くところの番号がすぐにわかる人などごく限られた人だけです。はたしてそのような人がどれだけいることでしょうか?
公共のこうしたシステムを利用する人は、地元で日常的に利用している人から、たまにしか使わない人、そして初めてここを訪れる人などもいます。また子供もいればお年寄り、さらには車椅子の方、耳の聞こえない方なども当然利用します。こうした多種多様な人ができるだけ迷わずに、できるだけ平等に使えるように設計するためには、ユニバーサルデザイン(*)と言われる思想を取り入れることが重要になります。
多額の開発費と期間を費やしたであろう本システムの前で、索引番号が分からずその他の入り口が下にあることもすぐに気づかずに、戸惑ってしまっているユーザの姿(特に高齢者や障害者の方)を想像すると、誰のためにこのようなデザインにしたのか?という疑問と切なさを感じずにいられません。
*ユニバーサルデザイン:古典的な定義としてはMace, R.(メイス)の「できる限り最大限すべての人に利用可能であるように、製品、建物、空間をデザインすること(design for all)」がある。
(共立出版2007年発行『ユーザビリティ ハンドブック』680頁より)
※本編部分は使いやすさ研究所<http://usability.novas.co.jp/>の使いやすさ日記(No.279)より一部加筆修正して転載。
過去記事
ユーザ中心設計のすすめ(序論)ーこれからの開発力を身につける
ユーザ中心設計のすすめ(第1回)-携帯電話のwebコンテンツ事例
筆者プロフィール
龍淵 信
1963年生、1986年法政大学工学部建築学科卒業後、工業デザインを勉強。
1992年株式会社ノーバスに入社。2001年4月にグループ会社の株式会社ユー・アイズ・ノーバスの設立に参画。
2005年10月グループ会社である株式会社U'eyes
Design(ユー・アイズ・デザイン)の執行役員を経て、2007年10月よりノーバスの経営戦略室とU'eyes
Designのシニアアドバイザーを兼務。現在に至る。
携帯電話などのコンシューマ製品、公共機器、OA機器のユーザインタフェース開発およびユーザ評価・調査に数多くかかわり、特に自動車用システムは、ここ10年ほどで150ほどのプロジェクト実績を持つ。
株式会社
U'eyes Design:http://ueyesdesign.co.jp
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