2008/02/24 日曜日 17:23:33 JST |
ややもすると、これまで防災は土木や建築が主役で、防災無線など電子機器などが一部に活用されてはいるものの、一般的にはITや情報システムとは縁が遠いと思われてきた面がある。ところが最近ではそのような認識が変わるような事例も出始めた。
その一例として緊急地震速報が挙げられる。緊急地震速報とは、震源との距離によるが、今からどのくらい先に(数秒から数十秒)に、どのくらいの震度の地震が発生するのかを知ることができる情報である。気象庁が中心となって、一昨年の8月から特定の企業など先行利用者向けに、昨年10月からは一般向けにサービスが開始された。テレビやラジオを通して緊急地震速報を知ることはもちろんのこと、それらを視聴していなくても、ビルや工場内など様々な場所や状況で緊急地震速報を知ることができるようになりつつある。そのようなテレビやラジオといったマスメディア以外の情報伝達ルートでは、実はIT企業が活躍し始めている。緊急地震速報の提供形態にはいくつかあるが、気象庁からの速報を受信し全国の顧客毎に異なる震度や到達時間を計算するサーバ施設を設けて、インターネットや衛星回線を介して、顧客に予め販売・設置した受信・警報機へ緊急地震速報を配信するのが一例である。また受信機は、放送設備と接続して館内・構内放送として、また製造設備と接続して緊急停止処置など製品や製造工程の維持に活用するようなシステムインテグレーションのニーズも増えつつある。これまで地震に関連したIT系の製品やサービスは地震計や防災無線などに限られていたが、緊急地震速報では、データセンター、ネットワークインフラ、受信・警報機、放送・製造設備との連携などIT事業者が主役に躍り出ている。
このように緊急地震速報を一例とした防災へのITの活用には期待が高まりつつある。政府のIT戦略本部のe-Japan重点計画においても、2008年度までに標準仕様を定めて、2010年度までに地方自治体への展開を図る、ことが目標に掲げられている。この方針を受けて、財団法人全国地域情報化推進協会がまとめ役となり、中央省庁、地方自治体と電機メーカ、コンピュータベンダー、システムインテグレータ、ネットワークキャリアなどが集まって、防災アプリケーションの基本提案書の作成作業が進められている。2007年度は、整備・導入が望ましいアプリケーションシステムのあり方を検討する防災アプリケーションサブグループと、防災情報を共有・連携するために必要な技術や運用手順を検討するデータ連携・標準化サブグループ、さらに地方自治体内に防災ネットワークを実現するための構築要件と地方自治体間の相互接続要件の検討を行うネットワーク・セキュリティサブグループの3グループにわかれて、さらに具体的な検討が進められている。
コンピュータやネットワークの技術進展を受けて社会全体へのITの活用が進んでいるが、先に述べたようにこれまで比較的縁の薄かった防災の分野でもIT活用の具体化が進んできた。民間企業として売上や利益を求めることはもちろんだが、それに加えて高機能化や低廉化によって社会や人々の安全に寄与できることは産業人としての誇りでもある。IT企業がそれぞれの強みを発揮して防災に取り組まれることが大いに期待される。
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