2007/11/29 木曜日 07:37:08 JST |
~オープンソースソフトウェアとファイルフォーマットの国際規格化~
<現状>
特定のベンダーや製品に拘束されず、広く最適な製品や技術によって構成する、いわゆるオープン化が進展している情報システム分野において、クライアントPCについてはこの十年余は実質上マイクロソフト社のWindows一色となっている。ほとんどのクライアントPCでは、OSにはWindows、ブラウザにはInternetExplorer、メイルソフトにはOutlook、オフィスツールにはMicrosoftOfficeが使用されている。
<課題>
マイクロソフト社は、上記のソフトウェア群のベースとなるOSをほぼ2年程度毎にバージョンを繰り返しており、本年はWindowsVistaが発売された。ウィルスなどのセキュリティ対策やバグ対応は比較的最近のバージョンしか対応されていないため(Windows95はもちろんのこと、98やMeは無償・有償ともサポートが打ち切られているため、ネットワーク経由やUSBメモリ・CD-ROMなどでのファイル交換は危険な状況にある)、クライアントPCの利用者は最新もしくは比較的新しいバージョンのOSが動作するPC、ならびにそのバージョンのOSが動作を保証するOfficeなどをあらためて購入することを常に迫られており、そのコスト負担は大きな課題となっている。
<新たな二つの潮流>
このような状況に対して、従来にない新たな二つの潮流が生まれつつある。第一にオープンソースソフトウェアのクライアントPCへの適用、もう一つはファイルフォーマットのオープン化・国際規格化の流れである。
<オープンソースソフトウェアの潮流>
オープンソースソフトウェアは、ソフトウェアの命とも言うべきソースコードを敢えて公開し、多くの開発者や企業・団体の協力によってソフトウェアの機能や品質の向上をねらったソフトウェアで、多くは無償もしくはサポート費のみ有償とするケースが多い。利用者にとっては、何よりも無償もしくは大幅なコスト削減ができること、さらに特定のソフトウェアベンダーからの囲い込みから逃れられるメリットがある。これまでオープンソースソフトウェアは、サーバ系のOSやデータベース、Webサーバなどの分野で普及が進んできたが、実質上マイクロソフト社のWindows一色となっているクライアント系についてもオープンソースソフトウェアの活用が検討され始めている。
<ファイルフォーマットのオープン化・国際規格化の潮流>
クライアントPCでは、メイルならびにWebサイトへのアクセスとならんでワープロ、表計算、プレゼンテーションなどのオフィスツールの利用が多い。 MicrosoftOfficeをはじめとするオフィスツールで作成したファイルはそれぞれ独自のファイルフォーマットで構成されているため、一般的には別のオフィスツールで活用できない。情報システムのオープン化の流れの中で特定ベンダー、具体的にはマイクロソフト社に依存、拘束されないファイルフォーマットが広く要望されるようになり、昨年ISO傘下で国際規格としてOpenDocument Formatという標準ファイルフォーマットが制定された。この国際規格化を受けて、IT先進国を中心に国際規格に沿った政府調達が行われるようになり、わが国でも本年7月から原則として特定の商標や独自のファイルフォーマットを持つ製品ではなく、国際規格や日本工業規格に基づく製品を調達するとの政府指針が示された。
<クライアントPCの新たな構成例>
オープンソースソフトウェアならびにファイルフォーマットの国際規格に準拠したクライアントPCのソフトウェア構成の代表例は以下のとおり。原則は無償であるが、サポートを受ける場合は有償となる場合がある。
OS:Windowsに代わってLinux系
ブラウザ:InternetExplorerに代わってMozilla Firefoxなど
メイル:Outlookに代わってMozilla Thunderbirdなど
オフィス:MicrosoftOfficeに代わってOpenOfficeなど
<今後の普及は?>
上述のようにコストの極小化やオープン化は大きな魅力で、WindowsVistaへではなくオープンソースソフトウェアに乗り換える動きが出てくることが予想されるが、一方で企業内の業務アプリケーションとしては従来のWindows系を前提としてシステムを構築されているケースがあり、その際はシステム移行に工夫やコストが必要となる場合がある。今後クライアントPCのソフトウェア環境はどのように変化していくか注目されている。
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