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レポート-地中熱研究会② プリント
2011/06/05 日曜日 11:16:48 JST

地中熱ヒートポンプで節電
今後の本格普及は確実!

横浜企業経営支援財団は5月16日、産学交流サロンとして第1回横浜地中熱研究会を開催し、「地中熱ヒートポンプは節電・省エネの切り札」をテーマに、地中熱利用促進協会理事長の笹田政克氏と、副理事長でジオシステムの高杉真司氏の両氏が講演した。研究会は10月まで5回開催される予定。
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■地中熱と地熱はちがう
地中熱は浅い地盤中に存在する低温エネルギーのことで、1000m級の孔井を掘削し高温のエネルギーを取り出す地熱とはちがう。地表付近は気温の影響により地温も変化するが、地下10~15mになると年間を通して地温はほぼ一定してくる。温度は地域の平均気温より一般的に1~2℃高いとされ、たとえば横浜市は18℃程度。全国では10℃~20℃ぐらいだという。この熱をヒートポンプで取り出し、冷暖房や給湯に使用するのが地中熱利用だ。地上と地中との温度差分の自然エネルギーが活用できるので、従来の空調などと比べて節電効果が大きい。

地中熱ヒートポンプには二つのシステムがある。一つは地中熱交換型(クローズドループ)。これは地中100mにポリエチレン製のU字配管したパイプを埋め、そこに不凍液を入れて地上に設置したヒートポンプまで循環させ熱を取り出す方式。二つ目は地下水利用型(オープンループ)。同じくヒートポンプを使用するが、揚水した地下水で熱交換する。揚水は再び地下の帯水層に戻し循環させる。オープンループは効率的な熱交換をできるが、都市圏だと工業用水法やビル用水法などで規制される。

■学校の消費電力を60%削減
NEDO(新ネルギ―・産業技術総合開発機構)は高効率エネルギーシステム導入促進事業で、地中熱ヒートポンプの省エネ効果を測定している。それによると消費電力が病院で40%減、学校で60%減となり熱需要の大きな建物ほど節電効果が大きいことがわかった。

また同協会の調査によれば、東京都のオフィスビルで従来の空調を地中熱利用に切り替えたところ、年間を通して49%の省エネとなり、夏場はさらに70%もの省エネとなったという。理由は、従来型の空調は排出のさいに外気温より高温に過熱するため夏場の電力消費量が増える。これに対し地中熱は温度が一定なので、過熱量がわずかですむ。また、これにより都市のヒートアイランド化も防ぐことができる。

■国のエネ計画にも盛り込まれる
日本の地中熱利用は、これまで政府のエネルギー政策から外れていたため、諸外国に比べ大幅に遅れている。普及しているのはアメリカ、中国、スウェーデンなどの国々で、すでに百万件~数十万件の利用がある。これに対して日本はわずか580件しかない。これを設備容量でみると、アメリカが1万2000MWt(メガワットサーマル)なのに対し、日本は13MWt。

地中熱を利用している建物は住宅、店舗、温水プール、病院、老人ホーム、オフィスビル、農業施設など。ただし、その7割以上は住宅で、とくに暖房費の削減から北海道が多い。
なお、地中熱は今年から政府のエネルギー基本計画に取り込まれたので助成金の対象となり、今後は普及に弾みがつきそうだ。
                                                                        (取材2011年5月16日)
NPO法人地中熱利用促進協会:http://www.geohpaj.org/
財団法人横浜企業経営支援財団:http://www.idec.or.jp/
ジオシステム㈱:http://www.geo-system.jp/

 
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