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レポート-和太鼓は脳を活性化させる プリント
2011/05/26 木曜日 09:44:25 JST

体で音を感じリズムで集中が増す
関西学院大学が近赤外分光法で実証

■音楽療法を実験で証明
力強い音で聴衆の心をつかむ和太鼓。県内の特別支援学校でも教材のひとつに活用されているが、この和太鼓に脳を活性化させ集中力を高める効果のあることが研究により実証された。関西学院大学理工学部情報科学科は情報処理学会で「和太鼓の効用に関する脳活動計測」とし、これまで音楽療法で定評のあった太鼓の効果をはじめてデータで明らかにした。

研究は太鼓を演奏した場合の脳活動をf-NIRS(近赤外分光法)により分析したもので、太鼓をたたくと前頭前野の脳血流に大きな変化がみられることをつきとめた。また簡易太鼓と和太鼓、ソロセッションとグループセッションでは、いずれも後者に大きな効果があることもわかった。

ts-110526-1.jpg脳は活発に活動するとき多くの酸素を必要とする。近赤外分光法は、その酸素を運んでいるヘモグロビンの変化を赤外線で調べる研究。実験は近赤外線を照射・吸収する測定器(センサー)を頭に取りつけ、太鼓の音色や振動、演奏法により前頭前野の血流がどう変わるかを調べた。被験者は高齢者4人と20代の学生12人。

太鼓の演奏は単調な音の繰り返しから、三三七拍子などリズム感のあるものまで、さまざまなパターンでおこなわれた。その結果、単調な繰り返しよりリズム感のあるもの、また個人よりも集団で演奏する方が酸素化ヘモグロビンの量が増え、とくに高齢者ほどその傾向が大きくなった。これは脳が活性化した証で、集中力を増した状態だという。

■和太鼓は古事記から登場する
研究報告によると、日本の太鼓は古事記に記述されるなどその歴史は古く、東大寺仏開眼会、合戦での合図、豊作祈願など儀式にも使われてきたという。さらに、近年はゲームなど娯楽の対象だけでなく、リハビリテーションや子供のリトミックなどにも活用の幅が広がっており、医療や教育用途で用いられることも多くなったとする。
しかし効用については、これまで科学的な検証が十分に進んでおらず「太鼓が人の身体や精神に与える影響を脳機能計測により分析し明らかにしたかった」という。

産学連携で実験に参加した太鼓センターの倉持武夫氏は「和太鼓は音を体で感じ、さらに演奏でも体を動かす。その効果はこれまで音楽療法士にも好評だった。それが研究により示された」とする。
同氏も特別支援学校で実際に子供たちに教えているが、経験から「太鼓の演奏は集中力が増しグループセッションは協調性を楽しく学べる」と語る。消極的な子供は自信をつけ、しだいに積極的になって笑顔も見せるようになるという。

■県内の養護学校にも寄贈
県の養護学校や特別支援学校には07年より神奈川県情報サービス産業協会(神情協)が地域貢献の一環として、毎年和太鼓を寄贈している。11年は県立相模原中央支援学校に寄贈し6校目となった。神情協は太鼓の効果に早くから注目し、寄贈する教材に選んだ。寄贈された養護学校からも好評のようだ。関西学院大学の研究についても知っており「和太鼓の効果が実証された」とする。科学的にメスを入れることで、いかに教育的価値があるかが改めて裏付けられる結果となった。
   ts-110526-2.jpg
                                                              (取材2011年5月)

和太鼓の効用に関する脳活動計測:http://ci.nii.ac.jp/naid/110004684873
関西学院大学理工学部情報科学科:http://ist.ksc.kwansei.ac.jp/
㈱太鼓センター:http://www.taiko-center.co.jp/
一般社団法人神奈川県情報サービス産業協会:http://www.kia.or.jp/

 
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