2010/12/09 木曜日 10:17:42 JST |
横浜標準の企業をつくる
いい会社を"見える化"したい
■横浜型地域貢献企業の仕掛け人
平成19年にスタートした市の横浜型地域貢献企業は21年10月現在、104社が認定されている。じつは、この制度の仕掛け人が協進印刷(神奈川区大口仲町)の江森克治社長だ。自社でも中学生の職場訪問の受け入れや、災害時の飲料水備蓄などを積極的に行っている。
環境保護印刷に力を入れ、印刷業界の環境自主基準であるグリーンプリンティング(マネジメントシステム)の認定も受けた。
「時代は転換期にある。合理化を追求し、行きついた結果が"現代"。これからは社会にあった合理化を進める時代」と同氏は言い切る。
たとえば、価格競争力だけを求めたのが、これまでの時代の合理化。「これからは環境への配慮や、社会的なニーズに対応した合理化も含めて考えることが不可欠」という。
ユニバーサルデザインや環境保護印刷は、一見すると大企業だけにニーズがあるように思える。しかし実際は、中小企業にも需要が顕在化している。「CSRの観点を大切に、こうした顧客を見逃さずに開拓することがビジネスに必要不可欠」とする。
■新しい企業価値を伝える
そもそも同氏が横浜型のCSRを考えはじめたのは、企業の不祥事が相次いだ5年前のこと。副理事長を務めた横浜青年会議所で「いい会社とはなにか」を議論したさいに、財務指標ではない新しい企業の評価基準が必要ということに思い至った。
つまり、いい会社とは「すべてのステークホルダーの要求を真摯に受け止め、その要求に応えるべく努力をすること」。そうであるならステークホルダーの要求に対する取り組みを"見える化"することで、企業の価値を誰にでもわかってもらえばいい。なかでも社会貢献はそれを映し出す鏡のようになる、と考えた。
そこで青年会議所はCSRの重要性を提言し、それは市の思惑とも一致した。さらにNPO法人横浜スタンダード推進協議会も設立し、その推進を図ろうと考えた。スタンダードとは基準や標準の意味で、言い換えるなら"いい会社"を横浜に増やす運動を広めようというのである。また、このNPO法人によって経済人が政策立案に積極的に関われるようにもした。
■中学生が社員にインタビュー
ところで、同社ではCSRでちょっと変わった取り組みもしている。そのひとつが地元の中学生による職場訪問。一般に職場訪問というと、工場などの生産現場を見学して終わってしまうことが多い。ところが、同社は印刷までの流れを見せたあと、中学生が興味を持った工程で働く社員に直接インタビューし、それを新聞にまとめるのだ。もちろん最後はプリントアウトまでする。
これにより、中学生に職場体験を身近なものに感じ、参加したことで何らかの成果を得てもらいたいという。
また、災害時の飲料水備蓄はペットボトルで300本分を平成18年から実施し、その表示とともに避難経路の掲示もあわせて行っている。
さらに、いま計画中なのが知的障害者支援。養護学校などで描いた絵を印刷物の表紙やカットとして使うことで社会参加できないか検討している。「顧客が有料で購入できるような仕組みをつくりたい」と同氏は語る。優れた会社を"見える化"する横浜スタンダードの発想は今後さらに広がりそうだ。
(取材協力:横浜市/横浜企業経営支援財団/他)
㈱協進印刷:http://www.kyoshin-print.co.jp/
(横浜型地域貢献企業認定)
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