広域産学連携・大学の"知"を生かす(第9回)－産学交流サロン・次世代センシング技術

2010/10/03 日曜日 15:48:26 JST

メガネなしで見る３Ｄ画像の研究 圧力センサ―で省スペースリモコン 横浜企業経営支援財団は9月24日、産学交流サロンを開催し、次世代センシングについて「大学における製品可能な最新研究事例の紹介」としてセミナーを開催した。 講師は東京都市大学知識工学部情報科学科教授の包躍氏、関西大学システム理工学部准教授の山本健氏、電気通信大学大学院情報理工学研究科（情報・通信工学専攻）准教授の角田博保氏の３名。 ◆包躍氏は「３Ｄ画像表示技術および画像センシング技術」をテーマに講演。 概要は次の通り。   ３Ｄ技術としては、①モアレ方式立体表示②大画面裸眼立体表示③新方式立体撮影について研究。モアレ縞による立体表示は、奥行き画像に視差画像を加えることで立体にし、アニメーション化もできる方式。現在、実用化されているモアレ式３Ｄは奥行き感を表現できるものの立体表示をできない。 また、大画面裸眼立体表示では、バリア式と遮光レンチキュラ式を紹介。バリア式はパララックスバリア方式として、左右の眼に入る画像を変えるためのスリットバリアを用いるもの。斜めバリアにより50インチ液晶ディスプレイを試作し、結果としてデジタルサイネージなどの３Ｄ表示に応用できるとした。 一方、画像センシングについても金属部品やニット製品の傷を検出する技術として紹介。画像をブロックに分割し、ブロック内の処理により傷ブロックを検出。それを領域単位で調査し傷領域を決定し良品、不良品に判定する。 包躍教授の研究室：http://athena.vm.cs.tcu.ac.jp/ ◆山本健氏は「簡単で安価な超音波応用」とし、力学的・化学的作用を示す超音波、不思議な振る舞いを示す超音波、について講演した。       内容は、①高分子の低分子化②音による材料判断③光で音を見る④負の屈折率を持つ材料⑤時間を反転する音波、について。概要は次の通り。 高分子の低分子化は力学的・化学的作用で高分子を切断し、組成が未知なる数万の分子量を数千、数百に低分子化する。また、任意の結合を選択的に切断する。この研究が実用化されれば医療、化学の分野で広く応用できる。 音による材料判断は、縦波（体積弾性率）だけでなく横波（ずり弾性率）による物性を評価するもの。軟骨など生体材料のずり弾性率を評価できれば、正常および再生軟骨の構造評価も可能となり、ひざの軟骨診断などに応用できる。 負の屈折率を持つ材料の研究は、音のフラットレンズを開発できないかというのもの。時間反転する音波は、反射すると強くなる鏡や、入射角に関係なく来た方向にもどっていく（反射させる）鏡の研究。超音波画像系に応用できる。 山本健准教授研究室：http://www.phys.kansai-u.ac.jp/~ultrasonic/ ◆角田博保氏は「人とコンピュータシステムのインタラクション技術」をテーマに講演した。    内容は、①圧力センサ―付きボタンを備えた汎用リモコン②多点検出デバイス③タッチパッド操作法の拡張④即応型e-learningシステムSHhoes。概要は次の通り。 ①の圧力センサによるリモコンの特徴は、８個の感圧ボタンを操作することで省スペース化と高汎用性を両立した。 また、３つのセンサにより三次元のダイレクトポインティングも可能となった。マウスを使いづらいWebブラウザ搭載のＴＶの操作などに応用できる。 多点検出デバイスは、1・27ミリピッチで160×96の点を同時検出できる。構造は、プリント基板上に横方向、フレキシブル基板上に縦方向の金属線を形成し、電極間にコネクタータイプの導電ゴムをはさみ、電流の回り込みを避けるためダイオードを配置している。SH7045で制御し、１回のスキャンに100ms程度必要。 研究ではこのデバイスを使い個人向けのキーボードの設計などを試作した。 角田博保准教授研究室：http://ltm.cs.uec.ac.jp 横浜企業経営支援財団：http://www.idec.or.jp/

 

< 前へ		次へ >