広域産学連携・大学の“知”を生かす(第6回)-産学交流サロン・創エネ技術研究 |
|
2010/08/25 水曜日 10:56:02 JST |
CO2を地中に封じ込め耐震性も実証
進む横浜スマートプロジェクト
横浜企業経営支援財団は7月30日、産学交流サロンを開催し「地球温暖化問題と次世代エネルギー技術紹介」としてセミナーを開催した。講師は(財)地球環境産業技術研究機構(RITE)の参与で工学博士の木村邦夫氏、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)エネルギー対策推進部主査の楠瀬暢彦氏、市地球温暖化対策事業本部地球温暖化対策課長の高橋俊和氏の3氏
◆木村邦夫氏セミナー「温暖化から地球を救うために!」の概要 木村氏はRITEの活動を紹介し、CO2の地中貯留技術などについて話した。これは地中の帯水層に圧入して封じ込めようというもので、工場や発電所などで発生したCO2を分離回収し専用の地上施設から送り込む。実験は深さ1km、厚さ60mの帯水層内(上層には厚さ160mの不透水層がある)に、約1万tの CO2を溜めることによって行われた。実証実験サイトは新潟県長岡市西南約20kmで、現在でもガス・石油が採掘されている地点である。実験は1本の圧入井と観測井3本を掘り、平成15年から17年までCO2の圧入をつづけた。この間新潟県中越地震が起きたが、調査の結果まったく問題がないことが確かめられた。こうした地下に貯留する方法は世界各地でプロジェクトとして行われ、各国とも有効な手段であることが確認されている。たとえば、米国では石炭をガス化してエネルギーとして取り出し、発生するCO2を圧入する実証事業が計画されている。日中間では石油採掘時の付随ガスであるCO2を回収し、それを油田に入れることで石油をより回収しやすくする実証研究も提案されている。CO2の分離回収については、液体吸収、固体吸着、膜分離などを研究している。
(財)地球環境産業技術研究機構:http://www.rite.or.jp/
◆楠瀬暢彦氏セミナー「エネルギーの地産地消を推進する『新エネ百選』とNEDOの新エネルギー関連事業」の概要
楠瀬氏はNEDOの紹介を行った。同機構は産業技術およびエネルギー分野における政策を実現する中核的な機関として活動しており、新エネルギーの導入促進にも注力していると語った。そのなかで技術的課題となっているのはコスト(効率)、稼働率、系統連系などだとした。また、分散型エネルギーシステムとしての利点でエネルギーの地産地消についても触れ、防災対策など緊急時に既存の系統電力に依存しない自立型エネルギーシステムの構築や、需要地に近接して設置するため送電時のエネルギー損失も低減できる可能性があるとした。
NEDOはこうした流れを踏まえ、地域性を考慮した新エネルギー利用の好事例を昨年「新エネ百選」として選定、継続的に情報発信している。また、新エネルギーベンチャー技術革新事業などを通じて技術シーズの顕在化にも取り組んでいる。
(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構:http://www.nedo.go.jp/
◆高橋俊和氏セミナー「低炭素型都市構造への転換を目指して―環境モデル都市・横浜の挑戦」の概要
高橋氏は市の創エネ、省エネへの取り組みと横浜グリーンバレー構想、また横浜スマートシティプロジェククト(YSPC)の紹介などを行った。YSPCについては、経産省の「次世代エネルギー社会システム実証地域」に選定され5年をかけて実施されるもの。構想では港北ニュータウン(約7・6万世帯)、横浜グリーンバレー(約8・7万世帯)、みなとみらい21(約3600世帯)で展開し、6つのテーマに基づく。それは①大規模な再生可能エネルギーの導入②個々の需要地点でのエネルギーマネジメントシステムの確立③地域エネルギーマネージメントと大規模ネットワークの相互補完関係の構築。そして④次世代自動車、鉄道なども活用した交通システムにおけるエネルギーの効率的活用⑤ライフスタイルの革新⑥プロジェクトの運用だ。
一方、横浜グリーンバレー構想として金沢区の工業団体など6地域を再生可能エネルギー技術のパイオニアエリアと位置付けた。ここでは環境・エネルギー産業の育成、具体的なエネルギー施策の展開、環境啓発拠点の形成などを行う。市内の中小企業などを取り込んだ一大プロジェクトとなりそうだ。
横浜市地球温暖化対策事業本部:http://www.city.yokohama.jp/me/kankyou/ondan/
横浜企業経営支援財団:http://www.idec.or.jp/
|