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広域産学連携・大学の“知”を生かす(第5回)-産学交流サロン・農工連携セミナー プリント
2010/07/20 火曜日 07:16:17 JST

植物工場の現状と課題
予防医学で注目の野菜


横浜企業経営支援財団は6月24日、産学交流サロンを開催し「首都圏における新たな植物工場のビジネスモデルを考える」としてセミナーを開催した。講師は千葉大学大学院園芸学研究科の後藤英司教授と、MKVドリームの松田喜文営業部グループマネージャー。

◆後藤英司教授セミナー「最新植物工場の概要と技術開発・研究トピックス」の概要
sangaku-5-1.jpg後藤教授は植物工場の定義から現状と最新技術、課題と展望について語った。それによると、植物工場とは気象の影響を受けず、周年的に野菜・花きなどを計画的に生産するシステムのことで、太陽光利用型と人工光利用型とがある。現在、植物工場は全国に80カ所あり、そのほとんどが養液栽培。これまでの経緯をみると、発光効率が高く均一照射できる蛍光灯が開発されてから床面積当たりの生産量を増やせようになり立体栽培が主流となった。
一方、人工光は太陽光を補う目的でも広く利用されており、日本だけでなく日照時間の少ないオランダや北欧諸国で人工光の照射は一般的になっている。この方式は将来、天気予報と連動して曇りの日や、日照量の少ない午前中などに自動的に照射するシステムとなることが考えられる。暖房の技術はビニールハウスで定着したが、植物をコンスタントに生産するためには光のほうが重要である。人工光は用途別にランプが開発されており、LED化が今後進むという。また、植物工場で光、熱に次いで重要なのが空気の流れ。淀まずに均一に流れなければならず、そこにはさまざまな技術が必要。環境面への配慮としては、養液栽培などの水を循環再利用するので、水の使用量を減らせるとともに大量の排水で地下水を汚染することもない点が長所である。
■予防医学で必須の野菜に
植物は適度なストレスを与えると有効成分の含有量が増える。たとえば、ある葉物の野菜は出荷前に低温にするとアントシアニンが多く含まれるようになる。畑では秋から冬にかけてのみ低温処理による有効成分の増加処理ができるが、植物工場なら環境をコントロールし周年を通じて同じ野菜を作れる。モロヘイヤは紫外線をあてるとクロロゲンの濃度が上がるので、人工的に照射すれば太陽の下で作るよりも増量できる。また葉物野菜は赤色の光をあてると光合成が促進され葉も増える。こうした光による有効成分の増減については現在研究中だという。
栽培技術が進むと植物工場は機能性食品素材の生産工場として利用されるようになる。予防医学では現在の「何を食べろ」から「どんな野菜をどのぐらい食べろ」に代わるだろう。遺伝子組換え植物を植物工場で生産し薬としての用途も考えられており、コメの中にワクチンと同じ効果を見込める機能を組み込めば、注射することなく食べるだけで済み、体に吸収させやすくコストも格段に落とせる。これは発展途上国などの予防医療の手段としても有効だ。
後藤英司研究室:http://www.h.chiba-u.jp/kanko/ 

◆松田喜文営業部グループマネージャーセミナー「MKVドリームが目指す植物工場」の概要
   sangaku-5-2.jpg
松田氏は現在稼働中の植物工場、MKVドリームスについて語った。これまでの実績から植物工場は季節、天候に左右されず安定供給が可能で、栽培も地域や土地を選ばずにできるが、設置コスト、運営コストが莫大になるとした。そこで同社はコスト高な完全人工光型ではなく太陽光利用型を採用した。ただし、高密度で栽培可能な苗だけは完全人工光による栽培にして量産化している。これは「苗テラス」と呼び、一般的な蛍光灯(HF蛍光灯)を各段6本設置したもので、光強度200~250μmol/㎡s程度を安定照射することで苗生産に必要十分な光量と光質を与えている。断熱性と密閉性に優れたプレハブの施設に収められており、そこにセルトレイ(60×30㎝)4枚/段を4~5段設けている。空調はエアコンで温度制御を行っているが、各段の間にファンを設置して棚内に微風を流し、温度むらの防止と蒸発散促進を図っている。その後、葉物野菜の苗はNFT方式の水耕栽培システムの「ナッパーランド」に移され、太陽光を利用して育成する。専用の培地を用い、セルトレイの底面に灌水させて液肥とCo2を供給する。NFL方式で雑菌がつきにくく、フザリウムなど根の病気に弱いとされるホウレンソウなども周年栽培できる。栽培ベッドはブロック分けしてそれぞれ培養液を循環し、収穫後の熱消毒(60℃の湯を循環)も効率的に行っている。また、収穫3日前から肥料を水の供給に変え、廃液の窒素などを微量にしてホウレンソウの葉中硝酸濃度も低下させている。
■トマトは低段密植栽培
トマトについては同様の育苗を行った後「トマトリーナ」と呼ばれる低段密植栽培(1段取り)で栽培し収穫する。この方式は、花房上位の葉の受光体勢を改善するとともに、株内の採光性と通気性を確保し果実に直接光をあてられるのが特徴だ。これにより通常のハウスものと比べて2倍の収穫量が可能だという。同社では植物工場の設備の販売設置から運営までを手掛けており、今後の市場拡大を見込んでいる。
MKVドリーム㈱:http://www.mkvdream.co.jp/

-「IDEC植物工場研究会」(仮称)の立ち上げについて-
本サロンで出席者にアンケートを取った結果、植物工場の①栽培システムや栽培技術に関する課題、②市場開拓(流通、顧客、消費者など)に関する課題、③経営管理に関する課題などに対して、高い関心がうかがわれた。これを受け財団は「IDEC植物工場研究会(仮称)」を秋以降に開催する予定で現在準備中だ。
準備が整い次第、IDECから広報を行う。関心のある企業、団体は積極的に参画いただきたい。
横浜企業経営支援財団:http://www.idec.or.jp/
 
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