レポート 林文子市長特別セミナー「女性が輝きながら働きつづけるために」 |
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2010/06/26 土曜日 20:37:12 JST |
女性の感性こそ企業経営に必要
情緒的なコミュニケーションを大切に
神奈川県情報サービス産業協会の女性活躍委員会はこのほど、林文子市長を講師に招聘し、横浜エクセルホテル東急で特別セミナー「女性が輝きながら働きつづけるために」を行った。参加したIT業界で働く女性たち約100名を前に、林市長はこれまでの自身の経験を踏まえ、仕事には思いやりと感謝の気持ちが大切で、市政運営についても信頼と共感をベースに行なっている。また男性と女性は同じコミュニケーションでも受け止め方に違いがあるなど、時折笑いを誘う体験談を語った。概略は次の通り。
■営業とは人に出会うこと
1965年、林氏は都立青山高校を卒業し大手繊維メーカーに入社したが、当時の日本は高度成長期の真っただなか。企業は男性中心の社会で、女性社員には数年のちの寿退社を前提とした仕事しかなかった。結婚を機に学歴性別に関係なく力の出せる仕事を求め、営業職としてホンダのディーラーに勤めた。しかし同社でも女性の営業職採用は初めて。頼み込んで入社したものの、男性社員ばかりのため宿泊を伴う研修には参加させてもらえなかった。
社長から直接研修を受けることになったが、「もし君が最初の1台をお買い上げいただいたら、こうして丁寧に水洗いをしてワックスをかけてお届けするんだ」と自身で洗ってみせ、売ったあとのアフターサービスが顧客との絆を深めるうえで重要なことを学んだ。独り立ちすると毎日100軒訪問することを自分に義務付け、日々歩きまわる。しかし、カーディーラーで女性の飛び込みセールスは前例がなく、なかなか顧客に話を聞いてもらえなかった。ところが、熱心に続けるうちに1軒の家で乳児を抱えた主婦と親しくなり、世間話もするようになった。ある日、その主婦が風邪で寝込んでしまった。日頃から親しくさせてもらっているお礼にと主婦に代わって牛乳を買いに走った。すると、しばらくしてその家の主人から「部下が自動車を購入したいので、ぜひ売ってくれないか」と頼まれた。この時「営業とは人に出会うこと。どうすればその人に喜ばれるかを考えること」に気がついたという。これは「御用聞き営業」とも言われるようになるが、売らんがための営業より顧客との絆を築くことのほうが大事であることを知った。こうした努力が次々と実り、入社1カ月ほどで支店のトップセールにまで上り詰めるのだ。
■男性は合理的、女性は情緒的に話す
男性は数字で合理的に話し、女性は情緒的に話す傾向がある。こうした気持ちの違いを知ることでコミュニケーションも変わってくる。じつは、それまでのセールスは自動車の性能と機能だけを一方的に話すことが多かった。そこに女性の感性を持ち込み、相手の話をよく聞くフェイスツーフェイスの関係を築くことに力を入れるようにした。すると何気ない話の中から顧客のニーズがわかり販売台数が飛躍的に増え業績が大幅に伸びた。その後、BMWに移り業績不振の支店を見事立て直す。ここでは社内の上意下達的な雰囲気を和らげ、部下の良い面を見るように心がけた。「成績が上がらない社員には不振の理由を一緒になって考え、何事もほめることで社員の気持ちを奮い立たせトップセールに育てあげた」という。そして「上司は部下を選べるが部下は上司を選べない。部下から見ると上司には権威という壁がある。上司がホウレンソウ(報告・連絡・相談)を部下に進んで行うことで初めて意思の疎通が円滑に図れる」と語る。
1999年にフォルクスワーゲン東京の社長に抜擢される。その後、BMW東京の社長を経て、2005年にダイエーのCEOにスカウトされ、2008年には日産自動車の執行役員、次いで東京日産自動車販売の社長も務めた。「すべての経済活動は生活感を抜きに成立しない。このため女性の感性は経営に不可欠で、企業を発展させる原動力となる」と参加者の質問に答えエールを送った。
■IT業界注目の女性活躍委員会とは
なお、同セミナーを主催した神情協の女性活躍委員会は、情報サービス産業に女性の活躍が不可欠という認識から、経営の視点で女性の活躍とキャリアアップを推進することを目的としている。こうした活動は他の同業団体に例がなく、先駆的な取り組みとしてIT業界のなかで注目されている。セミナーのほかに「ベスト・ワーキング・ウーマン表彰制度」や「働く女性のためのWEBサイト」なども実施している。
(社)神奈川県情報サービス産業協会:http://www.kia.or.jp/
働く女性のためのWEBサイト(IT Woman):http://it-woman.jp
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