広域産学連携・大学の"知"を活かす(第3回)-横浜アグリ・フードビジネス・プロジェクト(YAF) |
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2010/06/23 水曜日 07:22:16 JST |
大学の研究に支えられた地域の食材、食品を首都圏に
企業の技術で消費者に届ける
横浜企業経営支援財団(IDEC)の全国産学連携広域ネットワーク第3回は、地域の食材、食品を横浜(首都圏)の"食"関連企業に結び付ける農工連携支援。その狙いと計画を横浜市技術リエゾンプロデューサーの小澤茂幸(こざわしげゆき)氏に聞いた。
■休眠工場で植物を生産
今年は農工連携支援として、「横浜アグリ・フードビジネス・プロジェクト(YAF)」に取り組む。主なテーマは二つ。ひとつはより消費者に近い横浜型植物工場の創出。もうひとつは地域と横浜を結ぶフードチェーンの構築。後者は地域の大学が持つ農水産業のシーズと市内企業の技術を結び付け、食材、食品の開発と販売ルートの開拓を目指す試みだ。このうち横浜型植物工場は、地域特性を活かしたビジネスの可能性を研究会を通して探る。たとえば、工業地帯には移転などで使われなくなった工場や倉庫が存在するが、これを植物工場に転用できないか、生産する場合は植物の有効成分を高めるためにどんな工夫を必要とするのか、さらに生産した植物を原料に工業製品も作れないかなど、さまざまな観点からビジネスチャンスを探る。
また、実際に植物工場を稼働させている市内企業と関連する市内外の企業、大学を結びつけることで、より生産性をあげる技術や設備の開発支援も行う。このなかには日射量をコントロールできるハウス設備や、水耕栽培、品質安定化技術なども含まれており、さまざまなコンセプトの植物工場を考え、コスト高といわれる植物工場に中小企業も参入しやすくする。
■生産から販売まで"食"を繋げる
おもに連携大学で研究されている地域の食材、食品を首都圏で販売しやすくするために、市内外の企業が持つ食品加工技術や各種機関の測定技術などと結びつける。構想では地域の生産物が首都圏(横浜)で拡販できるよう安全性、食味、機能性の評価分析を行い、マーケティングによる商品企画などを経て、流通販売業者、消費者へと繋がるルートを構築する。小澤氏は「生産から加工、販売までのフードチェーンを作り機能させたい。これにより中小企業だけでなく市内の百貨店やレストラン、ひいては消費者にも大きなメリットが生まれる」とする。
提携大学のなかでは帯広畜産大学、高知大学、鹿児島大学などにはユニークな食材・食品に関する研究が多いとされ、実現すればこれまで地元でしか味わえないものも首都圏で手に入れられることになる。
IDECの農工連携支援は昨年度からスタートしており、これまで産学交流サロンを通じて食のトレーサビリティ、鹿児島大学や高知大学の食の取り組み紹介、農業の工業化などについてのセミナーを行ってきた。一方、機能性食品の市場は拡大し、天候不順で改めて植物工場が注目を浴びるなど、農工連携は現在大きな成長を見込まれている。中小企業にとってアグリ・フードビジネスは見逃せない分野となってきたようだ。
■サロンで植物工場の現状を解説
6月24日に開かれた農工連携の産学交流サロンは次の2つのテーマで行った。
◆テーマ『最新植物工場の概要と技術開発・研究トピックス紹介』講師は千葉大学大学院園芸学研究科教授 後藤英司氏
<講演概要>
植物工場は実用植物を周年的に計画生産する施設。現在、日本では野菜を生産する野菜工場と野菜・花きを育苗する苗生産システムが商業利用されている。植物工場は光源に人工光のみを用いる人工光型と太陽光を用いる太陽光型がある。周年的に高品質の野菜等を生産する点では同じだが、導入される技術は大きく異なる。講演では両方の技術的な特徴を明らかにし、技術開発の今後の方向性を解説する。また、環境制御による高付加価値作物の生産技術や医療用原材料生産のための遺伝子組換え植物工場についても解説する。
◆テーマ『 MKVドリームが目指す植物工場』~太陽光利用型の低コスト植物工場・早期に事業化できるシステムの提案~。講師はMKVドリーム 営業部グループマネージャー 松田 喜文氏
<講演概要>
MKVドリームは収益のあがる特徴ある農業の提案を目指し、様々な資材の開発を行っている。新規参入が難しいと言われているアグリビジネスにおいて低コストで早期に事業化可能なシステムを提案する。講演では同社の植物工場(事業・製品)を紹介するとともに、同社が目指す植物工場のあるべき姿を、技術課題などもふまえて紹介する。
(財)横浜企業経営支援財団:http://joint.idec.or.jp
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