2010/05/23 日曜日 13:58:26 JST |
従業員の3割に障害者を採用
「20年間、誰も中途退職せず」
■全社員が戦力
障害者雇用は法律で義務づけされているものの、さまざまな理由から大手企業ですら完全な実施に至っていない。そんななか、従業員18名のうち6名が知的障害者という中小企業がある。それも過去20年間、一人として辞めず誰もが意欲を持ち活きいきと働いている。自動車部品やスチール家具などのメッキを行う羽後鍍金(金沢区福浦)は、バブル経済真っ盛りのころ初めて知的障害者の雇用に踏み切った。人手不足の当時、障害者雇用に積極的な同業者にアドバイスを受けたのがきっかけだった。とはいえ最初は不安もあった。全社員が戦力とならなければならないような中小企業ではたして受け入れてもいいものか。
熟慮の末、黒岩順一社長は市内の養護学校からの実習生の申し入れを受けた。翌月から数名の生徒が見学に訪れ作業を手伝うようになった。しかし、不安はすぐに消えた。引っ掛けなどの単純作業も嫌がらずにまじめに取り組む姿に同氏は感心したのだ。そして、まず一人を採用した。当然ながら雇用にも戸惑があった。「働いてもらう以上は定年まで頑張って欲しい」と思う反面、得意先が評価するのは社内の事情ではなく羽後鍍金としての高品質の仕事。不良品が増えたり効率が落ちたりするようでは経営としてマイナスに働く。
■誰一人として退職させず
「初めはどう接すればいいのか、どう教えればいいのか毎日が試行錯誤の繰り返しだった」と専務の黒岩勉氏は振り返る。だが、そのひたむきな働きぶりに会社は障害者の採用枠を徐々に増やしていった。「健常者と比べて個々人の性格が大きく違う。親が子供をみるような気持ちが大切。これで信頼関係が築け、責任感とやる気を引き出せる」と語る。
一方、障害者から学んだことも多い。「毎日従業員に気配りするので会社全体の一体感が増し、あきらめず根気よく指導することは粘り強さにつながった」とする。同社は鉄と亜鉛の合金メッキや、ステンレスの電解研磨などの独自技術を持ち、また手作業に近いメッキ品にも対応し受注する。このため、難しい仕事の問い合わせもある。しかし「同業他社なら断わってしまうようなこともすぐに判断せず、何とかできないかと粘り強く考える習慣がついた」と同専務は苦笑う。昨年、世界的経済危機の影響で仕事量は三分の一に激減した。しかし同社では誰一人退職させなかった。
■中小企業で初の事業継続計画
同社はBCP(事業継続計画)活動の一環として昨年、中小企業(製造業)で初めて「災害時相互応援登録制度」を策定し、県内の同業社との契約を締結した。他の製造業と比べメッキ業界は水、電気、ガスのいずれかが止まっただけで工場を稼働できなくなる。「万が一のことを考えると事業の継続に同業者同士の連携が必要」と黒岩社長は言い切る。工場設備も大半が別注品のため、損傷を受けるとすぐに代替えが利かず、自ずと復旧には時間がかかる。これでは会社を維持することが危うくなる。同氏は「BCPは取引先に信頼を与えるが、それ以上に従業員の大きな安心となる」と考える。
同社はCSRの一環として今年から毎月1回、工場の周囲の清掃活動も始め近隣からも注目を集めている。
(取材協力:横浜市/横浜企業経営支援財団)
(株)羽後鍍金 :
横浜市金沢区福浦2-10-10 TEL045-701-5101 FAX045-784-1857
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