レポート:VMCYセミナー横浜市華僑総会名誉会長 曽徳深氏 |
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2010/04/04 日曜日 11:57:09 JST |
水の違いが生んだ調理法
日中の食文化どこが違う?
横浜市華僑総会名誉会長 曽徳深氏
■料理とは別のもう一皿
日本と中国の食文化の違いはどこにあるのだろうか――。NPO法人VMCYは3月29日、横浜情報文化センターに横浜華僑総会名誉会長で中華街・菜香新館オーナーの曽徳深氏を招き、日中の食文化を比較するセミナーを行った。
曽氏は衣食住のなかで最も大切なのが"食"とし、料理を一緒に食べる共食こそが人の心を豊かにする食文化の原点だと指摘した。なかでも、円卓を囲んでなごやかに歓談する中華料理はその代表的なもので、たとえば中華街ではその雰囲気を盛り上げるために長年の経験を活かし、「おもてなし」という料理とは別のもう一皿を出して食事を楽しんでもらっていると語った。
■日本料理にはない"炒め物"
では、日本料理と中華料理の違いはどこにあるのだろうか。それは一言でいうと水の違いにあるという。中国には黄河をはじめとした3大河があり、中華料理はそれぞれの流域の郷土料理として発展した。このため、いずれもその影響を受けている。大河は延々と大陸を横断して海に流れ込む。そこで源泉から遠く離れるほど水質が大きく変化し、生水を調理に使えなくなる。これに対して中国より河川の短い日本は、水質を変えることなく生水を調理にふんだんに使える。こうしたことから中華料理は加熱料理が基本となり、日本料理は刺身などの生食が特長となった。
なかでも日本料理と比べて違うのは、蒸し物と炒め物が多いことだ。中華料理といえばシューマイや餃子が有名だが両方とも蒸すことで旨みを出している。さらに炒め物になると、日本を代表する料理はほとんどない。
■「やわらかい」に三つの表現
また、調理の手間のかけ方にも違いがある。日本は素材の味を生かすため、魚の塩焼きやおひたしのように「単一料理」にすることが多い。ところが、中華料理は同じ食材を使っても油で揚げて煮込むなど手間をかけた「複合料理」が多い。
おもしろいことに、日本と中国の食文化は言葉にも違いがある。たとえば、日本では何を食べても硬いかやわらかいしか言わない。ところが、同じやわらかさでも中国では嫩(nen)、酥(su)、鬆(song)と表現を使い分ける。ちなみに、嫩は「若々しい、しなやかなやわらかさ」を指し、酥は「歯ざわりが軽くあり、噛むとサクッとくだける質感」のことをいう。鬆は「粘りのあるやわらかさではなく、すぐ崩れていくような触感」のことだ。さらに、視覚にも違いがある。日本料理は盛り付けなどの見た目を強く意識するが、中華料理は口に入れた感触のほうを大切にする。
■西洋料理とはもっと違う
こうした食文化も視野を広げて西洋と東洋で比較すると、より大きく違う。たとえば、東洋の料理は米飯とおかずという組み合わせだが、西洋には米飯にあたるものがない。パンがあるが主食的な扱いではない。これはコース料理を注文すればわかるだろう。また一般的な料理に蒸し物がないというのも特長だ。
最後に曽氏は、海外にも中華街はあるが横浜は店数、売り上げともに世界一の規模を誇るとし、中国の食文化に触れながら本場の中華料理を食べたいなら、ぜひ一度、横浜中華街に足を運んでほしいと話を結んだ。
菜香新館:http://www.saikoh-shinkan.com
NPO法人ヴイエムシイ(VMCY):http://www.vmcy.com
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