2010/03/30 火曜日 07:33:22 JST |
絵画が育てる子供の心
自信と達成感は一生の思い出
■物語に引き込まれる
――どの作品からも子供たちがしゃべりかけてきて、見ていて楽しい。そう語るのは今年3月に行われた「夢絵コンテスト2010」で、審査委員を務めた横浜
市教育委員会指導主事の長澤博昭氏だ。情報化社会を迎える未来の夢を小学生に描かせる夢絵コンテストは、県内のIT業界団体が主催し今年で14年目を迎え
た。毎年、全国で数多くの児童画コンクールが開かれるが応募絵画数、応募校ともに神奈川県を代表する規模だ。
長澤氏はこれまで国際的なコンクールを含めて数多くの児童画の審査員を務め、自身も中学校の美術の教師を経験し表現活動も行っている。絵には子供たちの気
持ちがそのまま表れるという。「たとえば、絵の中央に大きな木があれば、そこから物語の始まりを感じ、一緒に描く花や動物や友達などがひとつのストーリー
となっていく」と語る。
■自分を発見する
長澤氏は、絵画コンクールには教育的な効果も大きいという。そのひとつが自分発見だ。絵を描くことでこれまで見過ごしてきた周りのことに目を向けるように
なり、そして大人たちが作品を評価すれば自信にもつながる。コンクールを通してこれまで以上に積極的になった事例もあるという。そして、もうひとつの大き
な効果が達成感だ。授業時間に限りのある学校とは違い、コンクールへの応募なら好きなだけ時間をかけて描くことができる。仕上がったときの「やったあ」と
いう達成感は何ものにも代えがたいし、努力を積み重ねることの大切さも自然と身につき、一生の思い出ともなる。
長澤氏は児童画コンクールにはその国の文化が表れると語る。「子供たちが日常生活で接していることや、感じていることを素直に絵に表現するので、その国ら
しい文化を感じる。見ていて楽しいだけでなく、時々はっとするような色使いにも感心させられる」。日本の子供たちが描く絵は絵の具やパステルといった画材
の使い方が巧みで、色彩が豊かで明るい表現が多いという。「一生懸命に描き込んだ作品が目立ち、応募することで思いを伝えようという気持ちが強く感じられ
る」。これもコンクールが子供たちから引き出す力なのだろう。
■自由度の高いテーマ
一方、児童画コンクールのテーマについては「子供たちが素直に入り込める設定がいい」と大人たちの思惑も指摘する。絵画コンクールのなかには啓蒙やPRと
いった主催者側の意図を強く感じさせたり、また入賞作品を数点に絞り込んで最優秀賞などを設定したりすることもある。教育的な立場からすると「応募作品に
優劣がつくと、どんな絵が審査員好みか子供ながらに考える。テーマも自由度が高ければ高いほど子供たちの自己表現も豊かになり教育的な効果を期待できる」
とする。
長澤氏は夢絵コンテストを例にあげ「主催はIT業界だが、テーマが"未来社会の夢"となっていて自由度が高い。また優秀賞は30点、さらに入賞90点と、
多く子供たちが参加しやすい」と評価。「コンクールの応募校数269校、応募絵画数7087点という全国でも有数の児童画コンクールだ」とした。
夢絵コンテストは来年、第15回を迎える。神奈川県を代表する児童画コンクールとして今後も子供たちの夢を育んでいくに違いない。
夢絵コンテスト:http://www.kia.or.jp/Yume/index.php
神奈川県情報サービス産業協会:http://www.kia.or.jp
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