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ユーザ中心設計のすすめ(第48回)―CRX PROJECT プリント
2010/02/12 金曜日 20:28:37 JST

今回はCRX PROJECTについてのお話です。

CRX PROJECTとは

CRXといえばホンダの自動車を思い浮かべる方が殆どかと思いますが、今回ご紹介するCRXは競合関係にあるメーカー同士が協力してユーザ中心設計に取り組んだプロジェクトです。みなさんのオフィスの複合機(コピー機)はどこのメーカーのものでしょうか。あまり意識されたことはないかと思いますが、大きなオフィスですと一台だけではなく2~3台あり、場合によってはメーカーの違うものが利用されてはいないでしょうか。

このCRXプロジェクトは、メーカーが異なっていても誰もがオフィス機器を操作できるように、競合メーカー同士が協力してユーザーの立場に立った使いやすさを探求し、ユーザインタフェースの共通化、統一化を図るという活動です。判りやすく言えば、機器を違うメーカーのものに買い換えたり、また転職により使う機器が変わってもユーザーが混乱しないように、ユーザインタフェースの共通化、統一化を行なう活動です。

その競合メーカーとはキヤノン、リコー、富士ゼロックス、セイコーエプソンの4社です。1995年のスタート時はキヤノン、リコー、富士ゼロックスの3社であったことから、社名の頭文字を取ってCRXと名づけられましたが、2000年にはセイコーエプソンも参画したことから「Collaboration for Research and Exchange」の頭文字としてのCRXになりました。(上手くEPSONのEが盛り込まれています。)

活動当初は、それまでに各社が構築してきたユーザインタフェースデザインを持ち寄って整合化の検討を行ない、それを 「CRX Project User Interface Design Guidelines」にまとめて共有化しています。具体的には、操作パネルの用語やボタン色の統一、機能を示す絵文字の共通化、操作パネルレイアウトの整合化などです。
さらに検討は進み、機械内部のレバー類の色の統一、使いやすさの基本原則ガイドライン化、状態や警告の表示の考え方などの統一が図られています。
1999年には業界におけるユーザインタフェース整合活動が認められて、グッドデザイン賞を取得しています。

普通ならメーカー間は競争原理が働き、「我が社のユーザインタフェースがデファクトスタンダードだ!」と主張するあまり、色々なユーザインタフェースが世の中に氾濫してユーザが混乱するところですが、それをユーザ中心設計の考え方で統一したことは、とても重要で価値のある活動だと思います。

他の業界でも、CRXと同じような活動を望んでやまないのは私だけでしょうか。

参照:CRX PROJECTサイト http://www.crx.gr.jp/

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筆者プロフィール
鞆 幾也 (TOMO, Ikuya)
tomo.jpg1988年 金沢美術工芸大学工業デザイン科卒業。
1990年 株式会社ノーバス設立に参画。
2003年 株式会社ジー・テック・ノーバス設立。代表取締役に就任。
(2005年10月株式会社U'eyes Designに移管)
2005年10月から2007年9月まで株式会社U'eyes Designの上級執行役員に就任。
現在はU'eyes DesignのUCD上級コンサルタントとシニアアドバイザーを兼務。
医療機器のプロダクトデザインを行いつつ1996年頃よりユーザインタフェースデザインの業務をスタート。
特に1998年頃から携帯電話の操作仕様設計から画面のグラフィックデザインまで数多くの端末の開発支援をおこなう。
UCD開発支援の実績としては鉄道自動券売機(オムロン製)がある。

株式会社 U'eyes Design:http://ueyesdesign.co.jp
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