2010/01/25 月曜日 09:11:02 JST |
従業員の9割が地元採用の惣菜メーカー
材料へのこだわりが信用と信頼を築く
■募集せずとも繁忙期に人が集まる
食の安全と安心が問われるなか、地域に密着し原産地にこだわりぬく惣菜メーカーがある。古くから神奈川区白幡南町で事業を営み、煮豆や佃煮、おせちなどを製造する立花屋だ。おいしいものをより安全に、できれば安く、という3つの"作る"を社是とし、製品は生協をはじめとした品質を重視する流通業にファンが多い。
一般に惣菜メーカーにとって避けて通れないのが、繁忙期と閑散期の仕事量の差だ。なかでも正月を控えた10月から12月の3ヵ月間に需要が集中し、パートの確保に毎年頭を悩ませる経営者も多い。しかし、同社は大々的に求人募集をせずに人を集める。
じつは、同社の従業員の9割が地元の人たちで、大半が自宅から歩いて通える距離に住んでいる。このため毎年繁忙期になると自然と近隣からパートの問い合わせが入り、新規で募集する人員が少なくなるのだ。「100人募集すれば70人は地元のひとたち」と同社の樋口洋介社長は説明する。さらに職住接近なので60歳以上の高齢者も多い。通勤時間に束縛されない人を雇用することで急な残業にも柔軟に対応しやすいという。
■気がつくと工場は住宅に囲まれていた
地域住民とこうした関係を築いた背景には、同社の地域社会への貢献がある。創業した当時は畑に囲まれていたが、その後周辺に住宅が建つようになり、気が付けば本社工場は住宅に囲まれていた。そこで、地域活動への積極的な参加を心がけ、祭りやイベントへの協賛や主婦を対象にした食品衛生の講習会など、ことあるごとに企業を地域社会にPRした。
また、製造する惣菜も材料の産地にこだわることで、消費者に信頼感も生まれた。「地元にどんな会社か知ってもらうことが大切。ブランドに信用があってこそ初めて人が集まってくる」と樋口氏は語る。現在、同社の惣菜材料の7割は産地からの直接仕入れだ。たとえば、金時豆は北海道・帯広市を中心とした生産農家、佃煮は陸奥湾の漁協などから仕入れ、その大半で生産者の顔がわかる材料を使っている。
■海外も生産農家まで足を運ぶ
これは国産だけでなく輸入についても同じだ。グリーンピースはイギリスから輸入しているが、樋口氏自ら現地の生産農家を訪れ直接買い入れている。また、栗きんとんの材料となる中国産の栗は、現地の農家とともに栗の木の育成から関わり無農薬で栽培している。さらにいま手がけているのが農家で規格外品となった農産物の仕入れ。最近では成長しすぎて市販できない浜松産のカボチャに注目し、大きいほうが甘いことに注目し煮物に加工してヒットさせた。
一方、食育という観点からインターネットでの情報発信にも力を入れる。とくに"豆"にこだわっており、健康食品としての効果を自社のホームページで紹介する。「惣菜の材料仕入れから生産まで一貫生産を行うからこそできる情報提供だ。このこだわりをCSRとしても大切したい」と同氏は強調する。地域社会への気配りがあってこそ信頼される会社になれるのだろう。
(取材協力:横浜市/横浜企業経営支援財団/他)
㈱立花屋:http://www.tachibanaya-co.com
(横浜型地域貢献企業認定)
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