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ユーザ中心設計のすすめ(第42回)―ユニバーサルデザイン プリント
2009/11/11 水曜日 07:31:03 JST

いまさらではありますが、今回はユニバーサルデザインについての解説です。

ユニバーサルデザインとは
ユニバーサルデザインとは可能な限り、多様なユーザに使いやすいように配慮されたデザインのことです。ロナルド・メイスが提唱した概念ですが、それには下記のユニバーサルデザイン7原則があります。

1.誰にでも公平に使用できること
2.使う上での自由度が高いこと
3.簡単で直感的にわかる使用方法となっていること
4.必要な情報がすぐ理解できること
5.うっかりエラーや危険につながらないデザインであること
6.無理な姿勢や強い力なしで楽に使用できること
7.接近して使えるような寸法や空間となっていること

ユニバーサルデザインであるべきもの
なんでもかんでもユニバーサルデザインである必要はありません。一番必要性の高いものは、多様なユーザが利用する公共製品が挙げられます。例えば鉄道自動券売機、公衆電話、ATM、エレベータなどです。公共とまではいかないが複数のユーザが利用するもの、例えば、複合機(コピー機)、冷蔵庫、エアコンなどは、次にユニバーサルデザインの必要性が高いものと言えるでしょう。

また市役所、区役所、駅、空港、学校などの公共の建物もとても必要性が高いものです。個人住宅も、家族、お客など多様なユーザの存在を考えると必要性があるものと考えられます。逆に、デジカメ、携帯電話、ミュージックプレイヤーなどのパーソナルユースの製品はユーザが自分に合ったものを選択できるので、ユニバーサルデザインである必然性はあまりありません。

商店、ビル、マンションの入り口として普及している自動ドア。これは、ユニバーサルデザインの最たるものと言えるでしょう。

ユニバーサルデザインを実践するには
筆者は、以前に鉄道券売機のデザインを担当したことがあります。その装置は多くの鉄道会社で採用され全国に普及しております。その開発のときのテーマがユニバーサルデザインでした。まず多様なユーザの気持ちや通常の利用状況を把握するためにユーザの観察やインタビューを実施しました。その調査の中で実施してはじめて判ったことがいくつかありました。

・全盲の方は、お金をコイン投入口に入れる際には慎重になる

何故だか判りますか。当たり前のことかもしれませんが、もし入れ損ねて下にお金を落としたら、簡単に探すことができないからです。

・全盲の方は手(触覚)でモノを見る

視覚でモノの形を捉えることができないので、手探りで形や状態を把握します。よって突起の多い製品では、手探りは痛みを伴う行為となります。

・上肢障害により指が自由に動かせない人はお金を入れにくい

この方は硬貨を指で摘むことができないため、硬貨のたくさん入った巾着に手を入れ指の間に挟まった硬貨を慎重に細い投入口に入れていました。

上記のような多くの事象を発見することで改善ポイントが明確になり、製品のデザインに反映することが可能となった訳です。具体的には、硬貨を入れやすくしたすり鉢形状の投入口があります。これにより上肢障害の方も緊張することなく、投入口のすり鉢形状部分に硬貨を置き、落ち着いて指で押し入れることが可能になりました。

このプロジェクトで「観察⇒インタビュー⇒発見⇒デザイン」というプロセスの重要性を体験しました。自分の勘ではなく、多様なユーザの意見を設計に反映させるというまさに『ユーザ中心設計』の基本であったわけです。

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                                                         過去記事一覧(第1回~第41回)
筆者プロフィール
鞆 幾也 (TOMO, Ikuya)
tomo.jpg1988年 金沢美術工芸大学工業デザイン科卒業。
1990年 株式会社ノーバス設立に参画。
2003年 株式会社ジー・テック・ノーバス設立。代表取締役に就任。
(2005年10月株式会社U'eyes Designに移管)
2005年10月から2007年9月まで株式会社U'eyes Designの上級執行役員に就任。
現在はU'eyes DesignのUCD上級コンサルタントとシニアアドバイザーを兼務。
医療機器のプロダクトデザインを行いつつ1996年頃よりユーザインタフェースデザインの業務をスタート。
特に1998年頃から携帯電話の操作仕様設計から画面のグラフィックデザインまで数多くの端末の開発支援をおこなう。
UCD開発支援の実績としては鉄道自動券売機(オムロン製)がある。

 
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