2009/06/03 水曜日 10:38:27 JST |
CSRの実践で社内を活性化
意識の変化が業績向上の原動力に
■移転を機に新事業プランを推進
市場規模300億円といわれるゴマ油。健康によく家庭料理にもなじみ深い食用油のひとつだが、国内の消費量はこの数年ほぼ横ばい。その一方で、原料のゴマは99%輸入されているため、主産地中国の需要増で輸入価格は高騰。世界的な経済危機にもかかわらず原料費は高止まりの状態が続いている。こうした厳しい経営環境のなかで、CSRを実践することにより専業メーカーとして活力を生み出している企業がある。岩井の胡麻油(神奈川区橋本町)だ。
同社は2005年に移転し、品質、財務、環境、CSRを4本柱とした新経営計画を立てた。そして、その3年後の2008年、再度計画を見直すにあたり体系的に再構築する機会を市から認定を受ける作業によって得た。それは、財務で知財活用の「横浜価値組企業」、環境で「横浜市建築物緑化」、CSRで「横浜型地域貢献企業」だった。
■動機は社員の意識改革
CSRに取り組んだ動機のひとつは社員の意識改革だ。岩井徹太郎社長は「マンネリ化した日常業務から抜け出し、専業メーカーの強みをさらに引き出すには、社員の気持ちをひとつにする必要がある。CSRはその効果的なツールとなる」と語る。
岩井の胡麻油の創業は安政4年(1857年)。これまで150年以上にもわたって繁栄を続けてきたのは、常に顧客の満足度を高める努力を怠らなかったからである。いうまでもなく、専業メーカーとして品質には強い自信がある。しかし、取引先や消費者にブランドをより熟知してもらうには製造から営業に至るまで、社員ひとりひとりの日常の行動が大切だ。CSRを実践する背景にはそれがある。
■心のこもった「挨拶」も大切
「何をやればいいのか月に1回CSR委員会を開き、各部門で話し合っている。じつはこのプロセスが社員の意識を高める」と岩井社長は指摘する。とはいえ、同社は早くから工場見学の実施や、開国博Y150への参加、また始業時前の隣接道路の清掃といった活動を実行してきた。新たなCSR活動といってもなかなか探すのが大変である。そこで会議では対外的なことだけでなく、日常的な業務のことも取り上げられる。
たとえば、そのひとつが挨拶。ふだん何気なく交わしている「おはようございます」も心がこもってなければ相手に気持ちが正確に伝わらない。どうすれば、相手にさわやかな気持ちになってもらえるのか。「挨拶の仕方をちょっと変えるだけかもしれない。しかし、それだけで取引先や消費者に与える印象が変わり、周囲を明るくできる。それはCSRの基本だろう」とする。
■全社員が共有する会社の将来像
社員の気持ちが変われば、おのずと仕事への取り組み姿勢も変化する。社内のコミュニケーションはより活発となり、ひいては業績に好影響を与える。岩井社長は「CSRを通して、自分たちの会社は今後どうあるべきで、どのような将来を展望すべきかについて考えるようになる」と見通した。会社の将来像が社員全員の意識として広がったとき、業績の向上だけでなく、優良企業として社会的な存在価値がさらに高まるにちがいない。
(取材協力:横浜市/横浜企業経営支援財団/他)
岩井の胡麻油(㈱):http://www.iwainogomaabura.co.jp/
(横浜型地域貢献企業認定)
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