先進企業のCSR(第7回)ー夢絵コンテスト2009 |
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2009/04/28 火曜日 10:16:25 JST |
小学生が描く未来の社会
3年生の全クラスが授業で参加
■228校から約7400点の作品が集まる
子供たちの描く絵には純真な気持ちがそのまま表れる。その素直な心を育もうと毎月のように小学生を対象にした絵画コンクールが行われているが、なかでも情報化社会の未来と夢をテーマに、地域社会と密着して毎年開催されているのが県内IT関連団体の主催する「夢絵コンテスト」だ。1997年に始まった県内屈指のコンテストで、2009年は県内228校から7392点もの作品が集まった。「未来社会を描くことで、科学やコンピューターなどに関心を持ってもらうこと」を目的にしているが、ふだん未来の世界について思い描くことなどあまりない現代っ子たちにとって、自分たちの"夢"を考えるまたとない機会となっている。
■夢を考える機会を与える
夢絵コンテストの教育的効果を狙い、授業の一環に取り入れた小学校もある。横浜市立荏田西小学校もその一校だ。コンテスト参加の常連校で今年は小学3年生のクラス全員で応募した。同校の金丸恵子先生は「本来なら、夢は多感な子供たちの心の中で、いつも一杯に膨れ上がっていてもおかしくはありません。しかし、今の子供たちの大半はそうではありません。そこで、図画工作の授業の一環としてコンテストに参加することで、ふだんあまり思ったことのない"未来の夢"について考える機会を与えました」と語る。
とはいえ、参加した子供たちの反応はさまざまだ。「好きな絵が描ける」と勢い込む子もいれば、「えーっ」と声を上げ「夢ってなんだろう」と考え込む子もいる。金丸先生は「互いに夢について話し合ったり、あるいは絵を真似しあったりすることで、しだいに自分がはたして何を思い描こうとしているのかがわかってくる」という。
■クラス全体に達成感が広がる
たとえば、同じように花畑で縄跳びをしている絵があっても、ひとりの子は縄跳びの相手に友達を描き、別の子は可愛がっている子犬を描く。「教える側としては、いったいその夢のなかで自分が何をしたいのかをできるだけ聞いて、それをありのままに表現させるようにしている」。こうすると、始めぼんやりしていた夢がしだいにはっきり思い描けるようになり、今度はとことんその絵を描き込もうという熱意に変ってくるのだという。
金丸先生も「絵は家に持ち帰らず、授業時間中に仕上げることを基本にしています。応募には締め切りがあるので、短い時間のなかで納得できる作品に仕上げようと、みんな夢中です。絵を郵便局で発送したときは3年生のクラス全体になんとも言えない達成感が広がります。このような気持ちを共に分かち合えるのもコンテストのいい面かもしれません」と子供たちの変化を語る。
■夢は社会に活力を与える
夢絵コンテストはいまでこそ、県を代表する絵画コンテストのひとつだが、スタートした当初はなかなか小学校に意義を理解してもらえなかったという。主催者の神奈川県情報サービス産業協会では当時を振り返り「最初は募集要項すら受け取ってくれない小学校もあり、会員が手分けして小学校を訪問した」と苦労を懐かしむ。
その後、教育的効果に手応えを感じるとともに応募する小学校は増え続け、いまでは応募の常連校も数多く、なかには入賞に力を入れている小学校もあるほどだ。今年2月に行われた「夢絵コンテスト2009」の表彰式に来賓として出席した神奈川県の松沢成文知事は「夢を持つことはとても大切。そして、それを実現しようとするたゆまぬ努力が社会に活力を与える」とその意義を熱く語った。
はたして、子供たちが大人になる頃に今の社会はどこまで発展しているのだろうか。多くの夢が現実になっていることを願いたい。
(取材協力:社団法人神奈川県情報サービス産業協会/他)
夢絵コンテスト:http://www.kia.or.jp/Yume/index.php
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