ユーザ中心設計のすすめ(第22回)― 対応付けの悪いパワーウインドウスイッチ |
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2009/01/18 日曜日 16:27:58 JST |
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本編
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私が普段乗っている車のパワーウィンドウスイッチをご紹介したいと思います。
この車(1993年製のアメリカ車)はパワーウインドウ類のスイッチが運転席のドアの内側についていて、スイッチが6つ並んでいます。
パワーウインドウスイッチの取付け面
パワーウインドウスイッチ
駐車場や高速道路の料金所の手前から、走行中に窓を開けて料金を支払う準備をしようとすると、LF(左前)を操作してしまい、助手席の窓を開けることがよくあります。
何年も乗っている車なのになぜ間違えてしまうのでしょうか?
いちばん大きな要因は、スイッチが運転席側ドアの内側に、路面と垂直かつ、進行方向と垂直に配置されているため、各窓の位置や進行方向との対応付けが悪いことです。窓を操作する4つのスイッチが、運転席に座ったときの各窓の位置と同じように路面と水平かつ、進行方向と水平に配置されていれば操作ミスは少なくなるはずです。
もうひとつの要因としては、同じ形状のスイッチが同じ間隔で6個並んでいることも挙げられます。パワーウインドウのスイッチとドアや窓をロックするスイッチを分け、間隔や形状を変えたレイアウトになっていればミスをする回数は減ると思います。
一方、下の写真は最近の国産車に多いパワーウインドウスイッチです。 このように、各窓の位置や進行方向と自然な対応付けになっていれば、初めて乗った時でも間違うことなく操作できますね。
対応付けの良いパワーウインドウスイッチ
※本編部分は使いやすさ研究所<http://usability.novas.co.jp/>の使いやすさ日記(No.313 担当:松本)より、一部加筆修正して転載しています。
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解説
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「人間が認知ミスをしにくいレイアウト、操作ミスをしにくいレイアウト」
ここでは2つの視点に分けて再度見ていきたいと思います。
本編でも指摘しているように一番は対応付けの問題があるようです。正面を向いて運転姿勢を保ちながら利用するにも関わらず、窓を開ける際にはスイッチに対して90度頭の中で窓の配置を転換した上で使う必要があり、うっかりすると操作するスイッチそのものを勘違いしてしまうような、認知的なミスを誘発することになります。
またもう一つあるのは、もっとも頻度が高い運転席のスイッチが、3列の真中にあることです。これによって左右のスイッチ両方を気にしながらデリケートに真中のスイッチを操作する必要が出てきてしまい、うっかりすると操作しようと思った隣のスイッチを操作してしまうような、物理的な操作ミスを誘発することになります。
まさかとは思いますが、このレイアウトを決める際に、図面と向き合ってしか見ていなかったのではないかと思える仕様になっています。今回はハードの設計ですが、GUIの場合は特にこうしたことが起こりがちです。例えばタッチパネルのカーナビなどは、運転手からオフセットされたところに設置されるので、パソコンの画面に正面からだけ向き合って検討してしまっては、見にくかったり、押しにくかったりと言ったことを見落としかねません。ユーザの利用環境をしっかりと認識し、作りながら検証をする必要があります。
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9か月にわたって本コラムを担当させていただきましたが、2月(次回掲載分)から担当が、弊社の鞆幾也(ともいくや)に変わります。
短い間でしたが大変ありがとうございました。
今後とも引き続き「ユーザ中心設計のすすめ」をよろしくお願いいたします。
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過去記事一覧(第1回~第21回)
筆者プロフィール
龍淵 信
1963年生、1986年法政大学工学部建築学科卒業後、工業デザインを勉強。
1992年株式会社ノーバスに入社。2001年4月にグループ会社の株式会社ユー・アイズ・ノーバスの設立に参画。
2005年10月グループ会社である株式会社U'eyes
Design(ユー・アイズ・デザイン)の執行役員を経て、2007年10月よりノーバスの経営戦略室とU'eyes
Designのシニアアドバイザーを兼務。現在に至る。
携帯電話などのコンシューマ製品、公共機器、OA機器のユーザインタフェース開発およびユーザ評価・調査に数多くかかわり、特に自動車用システムは、ここ10年ほどで150ほどのプロジェクト実績を持つ。
株式会社
U'eyes Design:http://ueyesdesign.co.jp
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